タイの宝くじ:寺院のご利益から年金制度まで、庶民の生活に深く根付く文化

タイの人々にとって、宝くじは単なるギャンブルではなく、生活の一部と言えるほど深く根付いています。寺院での参拝と宝くじ購入はセットになっており、当選を祈願する人々の姿は日常風景です。この記事では、タイの宝くじ文化とその社会への影響、そして政府が検討している新たな社会保障政策「年金宝くじ」について詳しく解説します。

宝くじと寺院の密接な関係

タイには無数の寺院が存在しますが、多くの寺院の門前では宝くじの屋台を見かけることができます。人々は参拝で徳を積み、その後に宝くじを購入することで現世利益を得ようと考えています。バンコクのオンヌット駅近くにあるワット・マハーブット寺院は、宝くじ当選祈願で特に有名な寺院です。この寺院にはタイで最も有名な幽霊「メーナーク」が祀られており、くじ運が良くなると信じられています。雨季明けの11月中旬、激しい雨が降る日にも関わらず、境内は参拝客で賑わっていました。

ワット・マハーブット寺院の参拝客ワット・マハーブット寺院の参拝客

人々は当選番号を授けてくれるとされる木を熱心にこすり、お告げの数字を探しています。宝くじは政府公認の公営で、1枚80~120バーツ(約360~540円)。財務省傘下のクルンタイ銀行のスマホアプリからも購入可能です。

タイ人の宝くじへの情熱

タイの人々にとって、宝くじは生活に密着した存在です。毎月2回の抽選日には、当選番号を読み上げるテレビやラジオの音声に多くの人が耳を傾けます。1等の当選金額は600万バーツ。タクシー運転手のローさん(57歳)は、月収2万バーツのうち500バーツほどを宝くじに費やし、「高額当選には縁がないけど、数年に1度は当たる」と笑顔で語ります。主婦のグンさん(54歳)は、ベビーシッターのパート代と小遣いを全て宝くじに費やしているといいます。「宝くじだけで他のギャンブルはしない。貯金?ありませんよ」と話すグンさんの言葉からは、タイの人々の宝くじへの強い情熱が垣間見えます。

タイの宝くじ販売タイの宝くじ販売

年金宝くじ:社会保障の新たな試み

タイ財務省は、国民に広く浸透している宝くじを活用し、社会保障の財源確保につなげたいと考えています。その奇策とも言える政策が、「年金宝くじ」です。この政策の詳細はまだ明らかになっていませんが、国民の関心は高く、今後の展開が注目されています。宝くじ文化は、タイの社会経済に大きな影響を与えていると言えるでしょう。

まとめ:タイの宝くじ文化のこれから

宝くじはタイの文化、宗教、そして経済に深く根付いています。寺院での当選祈願、人々の宝くじへの情熱、そして政府の新たな社会保障政策への取り組み。これらの要素が複雑に絡み合い、タイ独自の宝くじ文化を形成しています。今後、「年金宝くじ」構想がどのように実現していくのか、そしてそれがタイ社会にどのような変化をもたらすのか、引き続き注目していく必要があります。