森林が「人間への愛想を尽かした」のか? 地球温暖化と炭素吸収源の危機

今年の夏も扇風機だけでは到底しのげないほどの猛暑が続いており、世界各地では異常気象による洪水や大規模な山火事が頻発しています。これにより経済や環境への影響は計り知れない状況です。日本政府が推進する「アンモニア混焼発電」など、温室効果ガス排出削減に向けた取り組みも進められていますが、私たちがより自然に配慮した生き方を模索しなければ、現状の改善は難しいでしょう。地球温暖化の主要因である温室効果ガスの排出量を減らし、それらを吸収してくれる森林を育み、守ることは喫緊の課題です。

しかし、最新のデータが示すのは、温室効果ガス抑制に貢献してきたはずの「森林の力」が著しく弱まっているという恐ろしい現実です。

森林のCO2吸収能力が低下:WRIの警告

世界資源研究所(WRI)の調査結果を引用し、米メディア「アクシオス」は、森林の炭素吸収能力がかつてないほど低下していると報じています。通常、森林などの植生は、化石燃料の燃焼によって排出される温室効果ガスのおよそ30%を吸収する重要な役割を担っています。しかし、2023年と2024年における森林によるCO2吸収量は、驚くべきことに平均値のわずか4分の1にまで落ち込んでいることが判明しました。これは、地球の気候変動対策にとって極めて深刻な事態を示唆しています。

2024年7月、米カリフォルニア州で猛威を振るう大規模山火事の様子。2024年7月、米カリフォルニア州で猛威を振るう大規模山火事の様子。

史上最悪レベルの山火事が原因

近年、世界中で史上最悪レベルの山火事が多発しており、これが森林のCO2吸収能力低下の主要な原因となっています。本来森林が吸収するはずのCO2量と、樹木の喪失や火災によって新たに排出されるCO2量のバランスが大きく崩れてしまったのです。2023年と2024年には、火災の急増によってそれぞれ40億トンを超える膨大な量の温室効果ガスが排出されました。これに対し、2023年に森林が吸収したCO2の量はわずか11億トンと、過去20年以上で最低レベルを記録しました。2024年には若干の増加が見られたものの、依然として従来の吸収量には遠く及ばない状況が続いています。

森林が「炭素吸収源」から「排出源」へ

アクシオスは、農耕、過剰な伐採、そして頻発する山火事などによる樹木の減少が、世界中の森林をCO2の吸収源から、逆に温室効果ガスの排出源へと転換させてしまうリスクがあると指摘しています。WRIの調査によれば、すでにボリビアの熱帯林やカナダの北方林など一部の地域では、炭素の吸収源としての役割を失い、供給源へとその性質を変え始めていることが確認されています。これは、森林が地球温暖化を加速させる要因になりかねないという、極めて危険な兆候です。

危機に瀕する地球の肺

これまで地球の「肺」として、温室効果ガスを吸収し気候を安定させる役割を担ってきた森林が、その能力を失いつつあるだけでなく、逆に温室効果ガスを排出する存在へと変貌し始めています。これは、地球温暖化との闘いにおいて、私たちが直面する最も喫緊かつ深刻な課題の一つです。この状況を改善するためには、温室効果ガスの排出削減に加え、森林保護と再生に向けた国際的な協力と、より自然に配慮した持続可能な社会への転換が不可欠です。


参考文献: