日本のウイスキー市場を揺るがす「転売ヤー」の存在。希少価値の高いジャパニーズウイスキーを巧妙な手段で入手し、高額で転売することで巨額の利益を得ている実態が明らかになってきました。今回は、彼らがどのようにして定価でウイスキーを手に入れ、どれほどの利益を上げているのか、その驚くべき実態に迫ります。
転売ヤー田中氏の華麗なる転売劇
都内湾岸エリアのタワーマンション最上階。田中氏(仮名)は、有名百貨店Aの外商担当者から手渡された紙袋を手に、満足げな笑みを浮かべていました。中には、世界的な人気を誇る「響30年」が2本。年間生産数がわずか数千本という希少なウイスキーです。
alt百貨店Aの外商担当者から手渡された紙袋。中には希少なジャパニーズウイスキーが…
田中氏は、この「響30年」を定価で購入。しかし、その目的は自身で楽しむことではありません。彼は、転売市場で高値で取引されることを知り、利益を得るために購入していたのです。
定価17万6千円が転売市場で50万円以上に
2015年頃から高騰し始めたジャパニーズウイスキー。国際的な人気に加え、原酒不足や投資目的の購入も相まって、価格は高騰の一途を辿っています。「響」や「山崎」といった銘柄は特に人気が高く、定価の数十倍で取引されることも珍しくありません。
田中氏は、入手した「響30年」2本に加え、「竹鶴25年ピュアモルト」2本を高級酒専門の買取店へ。すると、なんと合計140万円もの値がついたのです。定価で購入したウイスキーを転売することで、実に90万円もの利益を得た計算になります。
転売ヤーの手口と背景にあるジャパニーズウイスキーブーム
ジャパニーズウイスキーの人気が高まった背景には、2010年代半ばからの世界的なウイスキーブームや、中国人を中心としたインバウンド需要の増加があります。さらに、原酒不足による供給逼迫も価格高騰に拍車をかけています。
alt希少価値の高いジャパニーズウイスキーは、コレクターや投資家の間で高い人気を誇る。
このような状況下で、転売ヤーたちはあの手この手で希少なウイスキーを入手し、高額で転売することで利益を上げています。百貨店Aの外商担当者を利用した田中氏の例は、その一端と言えるでしょう。
ウイスキー投資という新たなトレンド
保管のしやすさから、ジャパニーズウイスキーは投資対象としても注目を集めています。2020年には、「山崎55年」がオークションで約8100万円で落札された事例も。こうした高額取引が、さらなる価格高騰を招いている側面もあります。
転売問題の深刻化と今後の展望
転売ヤーの暗躍により、真にウイスキーを楽しみたい消費者が定価で商品を購入することが困難になっている現状があります。この問題は、健全な市場の発展を阻害する要因となりかねません。
今後の展望として、メーカーによる販売方法の見直しや、転売対策の強化が期待されます。また、消費者自身も転売市場を利用しない意識を持つことが重要です。転売問題の解決には、関係者全体の協力が不可欠と言えるでしょう。
まとめ:転売ヤーの実態とジャパニーズウイスキーの未来
今回ご紹介した田中氏の事例は、転売ヤーの実態を浮き彫りにする象徴的な出来事です。ジャパニーズウイスキー市場の健全な発展のためには、転売問題への対策が急務となっています。私たち消費者は、この問題を正しく理解し、適切な行動をとることが求められています。