イギリス軍は、ウクライナ紛争と同規模の戦争に巻き込まれた場合、最短6ヶ月で壊滅する可能性があるという衝撃的な警告が発せられました。この記事では、元海兵隊大佐であり、現退役軍人担当相のアリステア・カーンズ氏の発言を中心に、イギリス軍の現状と課題、そして今後の展望について詳しく解説します。
ウクライナ紛争規模の戦争で半年で壊滅?
カーンズ氏は、ロンドンの防衛シンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」での講演で、ウクライナ紛争と同程度の死傷者発生率が続いた場合、イギリス軍は6ヶ月から1年で戦闘能力を失うと警告しました。
イギリス軍兵士
カーンズ氏は、ロシア軍の死傷者数を1日あたり約1500人と推定。このペースで死傷者が出続ければ、多国籍軍の一員として参戦した場合でも、イギリス軍は短期間で壊滅的な打撃を受けるとの見解を示しました。
予備役の重要性:国防の鍵を握る存在
カーンズ氏は、大規模な戦争に備えるためには、予備役の強化が不可欠だと強調。予備役は、有事の際に迅速に戦力を増強するための重要な役割を担っています。
イギリス軍の公式データによると、2024年10月1日時点で、正規軍の人員は約11万人、志願予備役は約2万6千人です。カーンズ氏は、予備役の増強と訓練の強化が、イギリスの防衛力維持に不可欠だと訴えました。
防衛省の報道官は、イギリス軍は世界最高水準の軍隊の一つであり、同盟国と連携してあらゆる事態に備えていると強調。予備役は軍にとって不可欠な存在であり、軍の対応力強化に大きく貢献していると述べました。
核の脅威と「第3の核時代」の到来
RUSIでの別の講演で、英軍制服組トップのサー・トニー・ラダキン国防参謀総長は、ロシアからの直接攻撃の可能性は低いとしながらも、核抑止力の維持が重要だと主張。「第3の核時代」に突入しつつある世界では、核保有国の増加と安全保障構造の不安定化が大きな課題となっています。
ラダキン提督は、中国の核戦力増強により、アメリカは中国とロシアという二つの核保有国への対応を迫られる可能性があると指摘。核兵器の拡散は、国際社会にとって深刻な脅威となっています。
消耗戦への備え:NATO加盟国との連携強化
カーンズ氏は、ウクライナ紛争のような現代戦は「消耗戦」の様相を呈していると指摘。イギリスは予備役の強化を通じて、NATO加盟国との連携を強化し、消耗戦への備えを進める必要があると述べました。
防衛費増額の必要性:安全保障の未来
外相のデイヴィッド・ラミー氏は、NATO加盟の欧州各国に対して防衛支出の増額を呼びかけました。ロシアのウクライナ侵攻や中東地域における紛争への関与を背景に、欧州各国は安全保障政策の見直しを迫られています。
ラミー氏は、イギリスは防衛費をGDP比2.5%に引き上げる目標を掲げていると表明。NATO加盟国全体で防衛費増額への取り組みを強化するよう訴えました。
今後の課題と展望
イギリス軍は、大規模戦争への備え、予備役の強化、核抑止力の維持など、多くの課題に直面しています。国際情勢の不安定化が続く中、イギリスは同盟国との連携を強化し、安全保障政策の強化に取り組む必要があります。