なぜ世界中が熱狂?Netflix『イカゲーム』、累計視聴40万9200年超の大ヒットの背景

米ニューヨーク、マンハッタンのミッドタウンにあるような体験型イベントスペースでは、「イカゲーム:ザ・エクスペリエンス」のような期間限定イベントが開催され、ロンドンやシドニーでも人気を博し、かつてソウルやマドリードでも実施されました。これは、Netflixが制作・配信し、2021年に世界的なブームを巻き起こした韓国のテレビシリーズ『イカゲーム』が、いかに強烈なインパクトを世界中の人々に与えているかを示す具体的な例です。参加者たちは、会場で作品世界を体験し、その人気を肌で感じています。残虐で悲惨な描写が含まれるにもかかわらず、なぜ『イカゲーム』はこれほどまでに多くの人々を夢中にさせ、Netflix史上最大のヒット作となったのでしょうか。

シドニーの『イカゲーム』体験イベントに設置された、巨大なヨンヒ人形シドニーの『イカゲーム』体験イベントに設置された、巨大なヨンヒ人形

累計40万年以上の視聴時間と「数字」の物語

Netflixが公表した公式視聴データは、『イカゲーム』が成し遂げた異例の規模を何よりも雄弁に物語っています。シーズン1とシーズン2を合わせた全世界での累計視聴時間は、驚愕の約35億8500万時間に達しました。これは実に年数に換算すると約40万9200年分という、想像を絶するほどの数字です。そして、2024年6月27日からは物語の最終章であるシーズン3の配信がついに始まり、この累積記録は今後、さらに飛躍的に積み上がっていくことでしょう。エンターテインメント作品の成功を、純粋な視聴時間というやや抽象的な指標で評価するのは、慣れない視点かもしれません。しかし、『イカゲーム』という作品そのものが、「計算」と「数字」に深く根差した物語であることを考慮すれば、この膨大な視聴時間は作品の本質と強く共鳴しています。作中では、極限状態に置かれた登場人物たちが、生き残るための確率を見極めたり、莫大な借金を返済するために人間性をどこまで犠牲にするかといった、冷徹で合理的な判断を常に迫られます。彼らは抽象的な数字である賞金や借金額、そしてゲームのルールが生み出す確率に翻弄される存在です。このような「計算」の物語であるからこそ、40万年という視聴時間は単なる数字以上の意味を持ちます。また、本作が世界中に与えた衝撃の大きさを示す興味深い事例として、インターネット検索エンジンに「45.6」という数字を入力するだけで、「45.6 billion won to USD(456億ウォンをドルに換算)」という予測変換が自動的に表示されることが挙げられます。これは、作中の優勝賞金額である456億ウォンがいかに多くの人々の関心を集め、現実世界の価値に換算して理解しようとしたかの明確な証拠です。

デスゲームに挑む追い詰められた人々

改めて、物語の基本設定をご紹介します。舞台は現代の韓国。本作に登場する主要人物たちは、事業の失敗、多額の借金、家族の病気など、それぞれの複雑な事情により深刻な金銭問題に苦しみ、文字通り人生の崖っぷちに立たされています。彼らは、高額な賞金が用意された謎めいた「デスゲーム」に参加することを決意します。主人公のソン・ギフンも、その一人です。ギャンブル依存症で多額の借金を抱え、娘の誕生日さえ忘れるほどだらしなく、懸命に働く高齢の母親から金を盗んでまで競馬に興じるという、救いようのない日常を送る中で、人生逆転をかけてゲームへの参加を受け入れます。

『イカゲーム』は、現代社会が抱える金銭的困窮や格差という現実的な問題と、命をかけた非日常的なゲームという対比を通して、世界中の視聴者に強烈な問いを投げかけました。膨大な数字と冷徹な計算に支配される世界で葛藤する人々の姿は、広く共感を呼び、シリーズを未曽有の世界的大ヒットへと導いた要因です。最終章シーズン3の配信開始により、その反響はさらに拡大すると見られます。

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