Dガンダムの1/144スケールプラモデルがバンダイスピリッツから発売されるというニュースに、ガンダムファンは騒然となりました。長らく「公式」の立ち位置が曖昧だったDガンダム。なぜこれほどまでに話題になったのか、その背景にある複雑な歴史を紐解いていきましょう。
Dガンダムとは? 謎多きワークスーツ
Dガンダムは、漫画『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』に登場する主役メカ。ガンダム作品に登場する機体でありながら、軍用モビルスーツではなく「作業用ワークスーツ」という区分。この微妙な立ち位置こそが、今回のキット化を特別なものにしているのです。
『ダブルフェイク』と『模型情報』 時代の証言者
Dガンダムの謎を理解するには、『ダブルフェイク』とその掲載誌である『模型情報』の存在を知る必要があります。インターネットが普及していなかった1979年、模型ファンにとってメーカー発の情報誌は貴重な情報源でした。バンダイが発行する『模型情報』は、ガンプラ情報はもちろん、小説や漫画も掲載する独自の進化を遂げ、やがてロボットアニメ専門誌「サイバーコミックス」を生み出すことになります。
Dガンダムの画像
『ダブルフェイク』の魅力と難解さ
『ダブルフェイク』は、『ZZガンダム』と『逆襲のシャア』の間の時代を描いた作品。コロニー建設作業員ダリー・ニエル・ガンズが、テロ組織の攻撃に巻き込まれるところから物語は始まります。緻密なメカ描写と、読みにくさで知られる本作。アクションシーンの省略や、コマごとのキャラクターの作画の不安定さなど、現代の漫画に慣れた読者には難易度が高い作品と言えるでしょう。
しかし、バブル期に連載された本作には、当時のオタクカルチャー特有の熱気が溢れています。軽妙なセリフ回しや時代を感じさせるギャグ、そして緻密なメカニックデザイン。ガンダムシリーズとは一線を画す独特の世界観が、多くの読者を魅了しました。
Dガンダムのデザイン アニメ化を無視した挑戦
Dガンダム最大の特徴は、「アニメ化を全く考慮していないデザイン」にあります。アニメ用のモビルスーツデザインは、可動域を意識した線数の調整が必須ですが、『模型情報』掲載のメカにはその制約がありませんでした。福地仁氏によるDガンダムのデザインは、露出したシリンダーや全身のスラスターノズルなど、まさに「模型情報」時代の産物と言えるでしょう。
“俺ガンダム”から公式へ?
『模型情報』掲載作品には、ライセンスや設定が曖昧なものが多く存在します。「俺ガンダム」とも呼ばれるこれらの作品は、当時の自由な創作環境を象徴する存在と言えるでしょう。Dガンダムもまた、公式設定との整合性が曖昧な機体でした。しかし、ゲーム「SDガンダム GGENERATION-F」への登場、そして今回のキット化によって、公式の承認を得たと言えるでしょう。
Dガンダムのキット化は、多くのファンにとって驚きであり、同時に希望でもあります。なぜなら、立体化されていない「俺ガンダム」はまだ数多く存在するからです。この流れが続けば、他の幻の機体もキット化される可能性があるかもしれません。ガンダムの歴史の新たな1ページが開かれたと言えるでしょう。
未来への期待 幻の機体たちの復活は?
今回のDガンダムのキット化は、ガンダムファンにとって大きな意味を持つ出来事でした。「黒歴史」とも呼ばれる複雑な歴史を持つDガンダムが、公式に認められ、立体化されたのです。このニュースは、他の「俺ガンダム」たちのキット化への期待を高めると同時に、ガンダムの歴史の奥深さを改めて認識させるものとなりました。今後のバンダイの動向に注目が集まります。