日本の医療現場における看護師の夜勤の実態が、深刻な状況となっています。日本医療労働組合連合会(医労連)が発表した「2024年度夜勤実態調査」の結果から、長時間夜勤の増加、慢性的な人手不足、そして医療崩壊の危機が改めて浮き彫りとなりました。この記事では、調査結果の詳細と専門家の見解を交えながら、看護師の夜勤を取り巻く現状と課題について解説します。
深刻化する長時間夜勤の実態
医労連が実施した調査によると、「2交代」と呼ばれる8時間以上の長時間勤務となる病棟の割合は50.7%に達し、過去最多を更新しました。さらに、その半数近くで16時間以上の長時間夜勤が行われているという衝撃的な事実も明らかになっています。
看護師の夜勤実態調査に関する記者会見の様子
繰り返される医療崩壊の危機
医労連中央執行委員長の佐々木悦子氏は、長時間夜勤による看護師の疲弊が離職につながり、さらなる人手不足を招いていると指摘。「このままでは、コロナ禍で経験した医療崩壊が再び現実となる」と警鐘を鳴らしています。実際、日本医療連の調査では、医療機関の約7割が看護師不足に悩まされており、病棟閉鎖や病床削減を余儀なくされるケースも少なくありません。
夜勤負担軽減への取り組みと課題
1965年に人事院は看護師の夜勤制限の必要性を認め、「夜勤は月平均8日以内」「1人夜勤禁止」などの判定を出しました。また、看護師確保法の基本方針でも、夜勤負担軽減を目的とした「複数・月8日以内の夜勤体制の構築」が掲げられています。
現場での乖離と人手不足の悪循環
しかし、慢性的な人手不足により、これらの指針は現場で十分に順守されていないのが現状です。医労連書記次長の松田加寿美氏によると、今回の調査では「3交代」の職場で約3割、「2交代」でも約4割の看護師が規定以上の夜勤を行っていることが判明しました。特に、ICUやCCUといった重症患者を担当する職場では、夜勤回数オーバーの割合がさらに高く、深刻な状況となっています。
夜勤専門看護師の増加と増員への期待
夜勤を専門とする看護師の割合は17.8%と増加傾向にあり、人員不足の中で夜勤体制を維持するために、夜勤専門の看護師への依存度が高まっていることが伺えます。 「医療現場の夜間業務を支える夜勤専門看護師の存在は不可欠ですが、同時に、彼ら彼女らの負担軽減も重要な課題です。」と、医療コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は指摘します。「夜勤専門看護師の増加は、人手不足の深刻さを示す一つの指標とも言えるでしょう。」
集中治療室の様子
抜本的な対策の必要性
医労連は、看護師の増員や実効性のある夜勤規制など、抜本的な対策を国に求めていく方針です。看護師の過酷な労働環境の改善は、医療の質の維持・向上に不可欠であり、喫緊の課題と言えるでしょう。
まとめ
看護師の夜勤を取り巻く現状は、長時間労働、人手不足、そして医療崩壊の危機という深刻な問題を抱えています。関係機関の連携による抜本的な対策が求められています。