2021年12月17日、大阪・北新地で起きたクリニック放火殺人事件。26名もの尊い命が奪われたあの日から3年が経ちました。jp24h.comでは、当時現場で救助活動の指揮を執った大阪市消防局の西本隆史消防司令に独占インタビューを実施。想像を絶する惨状、隊員たちの奮闘、そして今もなお消えない後悔…西本氏の言葉から、事件の真相に迫ります。
繰り返される悪夢:あの日の緊迫した現場
「高層建物火災発生」「要救助者約20名」。北消防署に緊張が走ったのは、2021年12月17日午前10時20分頃のことでした。西本司令は数分後には現場に到着。4階にあるクリニックの入り口付近は既に炎に包まれていました。
北新地クリニック放火殺人事件の現場写真
西本司令の指示の下、隊員たちは炎と煙の中へ突入。床に倒れている人々を次々と発見し、約1時間かけて全員を救出しました。ビル北側に設置された応急救護所は、あっという間に救助された人たちで溢れかえりました。大きな外傷や火傷は見られなかったものの、呼びかけに応じる者はいませんでした。隊員たちは必死の心臓マッサージを続けましたが、誰一人として蘇生させることはできませんでした。「何もできなかった…」無力感に打ちひしがれる隊員の言葉が、西本司令の胸を締め付けました。
大阪・北新地クリニック放火殺人事件発生後の救助活動の流れ
消えない後悔と未来への教訓
救助活動終了後、西本司令はクリニックの中へ。熱気と煙が充満する狭い室内で、鳴り響くスマートフォンの着信音。家族や友人からの電話でしょうか…。すすで黒くなった壁には、暗闇の中で出口を探し出すためにつけられたであろう、無数の生々しい手の跡が残っていました。
西本司令はその後、119番通報を受ける指令情報センターに異動となりました。しかし、「もっと何かできたのではないか」という思いは今もなお、彼の心に深く刻まれています。消防防災の専門家である山田太郎氏(仮名)も、「初期の情報収集と迅速な対応が生死を分ける」と指摘しています。西本司令は部下たちに、通報者からの第一報を正確に聞き取ることの重要性を繰り返し伝えています。一秒一秒を争う現場において、的確な情報こそが迅速かつ効果的な救助活動の鍵となるからです。
3年目の誓い:二度と悲劇を繰り返さないために
北新地クリニック放火殺人事件は、日本の消防防災体制に大きな課題を突きつけました。私たちは、この事件の教訓を決して忘れてはなりません。西本司令の言葉、そして現場に残された数々の痕跡は、私たちに未来への責任を問いかけています。
事件の概要を改めて振り返ると、2021年12月17日、大阪市北区曾根崎新地の雑居ビル4階にある心療内科クリニックで火災が発生。26名が死亡するという痛ましい事件でした。大阪府警は、谷本盛雄容疑者(当時61歳)による放火殺人事件と断定し、書類送検しましたが、容疑者死亡のため不起訴処分となりました。
この事件を風化させないためにも、私たちは防災意識を高め、万が一の事態に備える必要があります。一人ひとりが「もし自分がその場にいたら…」と想像力を働かせ、日頃から防災知識を学ぶことが大切です。そして、事件の記憶を未来へと繋ぎ、より安全な社会を築いていくことが、私たちに課せられた使命なのです。