石破茂首相(自民党総裁)の去就を巡る政局の混乱が続いており、日本政治は不安定な局面を迎えています。先日開催された自民党の両院議員総会では、党則に基づく臨時総裁選の実施要否を検討する方針が決定。党内からは「実施不可避」の声が聞かれる一方、日米関税交渉の最中という現状に加え、専門家からは夏以降の日本経済全体への影響を懸念する指摘も上がっています。
自民党本部での石破茂首相(総裁)の去就を巡る議論の様子
臨時総裁選実施への党内の動きと意見
自民党内では、石破首相の責任を問う声が高まり、総裁選の早期実施を求める動きが顕著になっています。8日に開かれた自民党の両院議員総会では、党則に基づき臨時総裁選を実施すべきかどうかの検討が進められる方針が固まりました。ある参院議員は「もう総裁選実施の流れは決まった。大きく前進だ」と語り、この決定が今後の展開を決定づけるものだと認識しています。
かつて石破派に属していた田村憲久元厚生労働相も10日のテレビ番組で、「石破首相には参院選で敗れた責任がある。両院総会の意見は非常に大きい」と述べ、党内の声が首相の去就に強い影響を与えていることを示唆しました。
手続きの不透明性と石破首相の継続姿勢
自民党の党則では、所属国会議員と都道府県連代表の総数の過半数から要求があれば、臨時総裁選を行うと定められています。しかし、具体的な実施期限は明記されておらず、手続きを進めるためには欠員となっている選管委員を執行部が任命する必要があるなど、不透明な部分も残されています。
党総裁選管理委員長の逢沢一郎衆院議員は、意向確認の開始時期について「8月15日の終戦記念日を心して迎える必要もある。18日の週以降になるだろう」との見通しを示しました。一方で、石破首相自身は依然として続投の姿勢を崩しておらず、総裁選への動きがどの程度のペースで進むのか、予断を許さない状況が続いています。
政局混迷が日本経済にもたらす懸念
こうした政局の先行きの不透明さは、日本経済にも影を落としています。丸紅経済研究所社長(丸紅執行役員)の今村卓氏は、現在の自民党が石破首相の「続投と退陣を求める声が拮抗する微妙な状態。一種の袋小路に入ってしまった」と分析しています。
特に懸念されるのは日米関税交渉への影響です。今村氏は、もし新総裁が選ばれた場合、「トランプ米大統領との関係構築をいまからもう一回やりますかと言われると、継続中の交渉への影響もあり、国益に合致するのかという批判も想定しなければならない」と指摘。政権交代が外交・通商政策の停滞を招くリスクを強調しました。
さらに、今村氏は「40年債など超長期金利の上昇に表れるように、実は『天井』は近いのではないか」と述べ、日本が財政面で脆弱になる可能性を示唆。「英国のトラスショックが日本でも起こるとまで言うつもりはないが、日本が財政再建団体のようになってしまうリスクはある」と警告しています。
財政健全化と安定政権の重要性
政治の早期安定と政策の確実な遂行は、現在の日本にとって喫緊の課題です。今村氏は、日本には「一律での消費減税などをする余裕はない」と述べつつも、「本当に苦しんでいる人たちはいる。そこにしっかりスポットを当てた政策を組み立てていく必要がある」と、真に必要な層への支援を訴えました。
また、中長期的な財政の安定性にも言及し、「課税すべきものには課税していかないと、中長期の日本の財政はかなり危険な領域に達するかもしれない」と、税制改革の必要性を強調しました。安定した政治基盤のもとで、これらの経済・財政課題に的確に対応していくことが、今後の日本にとって不可欠となります。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)