日本の生活保護申請件数は、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大以降、5年連続で増加傾向にあります。これまで何とか生計を維持してきた世帯においても、経済的・社会的な影響から生活保護に頼らざるを得ない状況が広がっていることが明らかになっています。この現象の背景には、さまざまな複合的な要因が存在します。
生活保護申請件数の増加状況と現状
厚生労働省の調査によると、2024年度の生活保護の利用申請件数は25万9353件に達し、前年度比で3.2%の増加を記録しました。これにより、2020年度から5年連続で前年度を上回る結果となりました。
月ごとの申請件数を比較しても、多くの月において2023年度よりも2024年度の申請件数が上回っており、増加傾向が継続していることが明確に示されています。これは、多くの国民が経済的な苦境に直面している現状を浮き彫りにしています。
生活保護申請件数増加の背景にある経済的困窮を示す女性
申請増加の主な要因とは?
近年、生活保護の申請件数が増加している背景には、以下の社会的・経済的な要因が複雑に絡み合っています。
止まらない物価高騰
2021年後半から徐々に始まった物価高騰は、現在もその勢いを維持しており、終息の兆しが見えません。食料品やエネルギー価格の高騰は、特に低所得世帯にとって大きな打撃となっています。これまでギリギリの生活を強いられていた世帯が、物価上昇に耐えきれなくなり、生活保護の受給申請に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれていることが、増加の主要な理由の一つとして挙げられます。
高齢者・単身世帯の増加
生活保護受給世帯のうち、高齢者世帯が全体の55.4%を占めており、高齢化の進展とともに申請数も増加していると考えられます。特に、高齢単身世帯での受給率が高く、受給世帯全体の約半数にあたる51.6%を占める状況です。老後を一人で暮らす高齢者が増加し、家族からの経済的・精神的支援が得られにくいことが、保護申請の増加に影響しています。
非正規雇用の拡大
非正規雇用労働者の増加も、生活保護申請件数が増加している一因と考えられます。非正規雇用は、正規雇用に比べて賃金が低く、雇用の安定性も確保されにくい傾向があります。これにより、経済的な安定が得られず、病気や失業、予期せぬ出費が発生した際に、たちまち生活困窮に陥る世帯が増加していると見られます。
まとめ
生活保護申請件数の継続的な増加は、物価高騰、高齢化の進展、非正規雇用の拡大といった複数の社会経済的要因が複合的に影響し合っている日本の現状を反映しています。これらの課題は、個人の問題に留まらず、社会全体で取り組むべき喫緊の課題として認識されており、今後の社会保障制度のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。
参考文献:
- 厚生労働省「被保護者調査」
- LIMO「生活保護の申請件数は、令和2年の新型コロナウィルス感染拡大後から5年連続で増加しています。」(https://limo.media/articles/-/89295)