東京・世田谷区のマンションで、信じがたいミスが発覚し、建て替え計画が白紙に戻り、住民に衝撃が走っています。施工不良が見つかり建て替えが決まっていた矢先、図面の北が実際の方角と14度もずれていたことが判明。この事態を受け、事業主は建て替えを断念し、住民に部屋の買い取りを提案するという異例の事態となっています。
施工不良から発覚した「北ずれ」問題
世田谷区にある地上8階建て、49戸のマンションでは、2018年以降、はり部分に多数の穴が開くなど、施工不良が次々と発覚。耐震性の問題も指摘され、2020年に事業主である東急不動産が建て替えを提案しました。住民は事業主負担の仮住まいに移り、建て替え準備が進められていました。
マンションの外観
しかし、測量作業の結果、図面の真北が実際の方角より西に14度ずれていることが判明。日影規制や高度斜線制限など、建築基準法に違反する状態であることが判明しました。このずれを修正して再建築すると、戸数が約半分の25戸に減少してしまうといいます。
専門家も驚愕「ありえないミス」
マンション問題に詳しい石田隆彦一級建築士は、「14度ものずれはありえない。マンションのような大きな建物では、隣の土地や道路にはみ出してしまう可能性もある」と指摘。この前代未聞のミスに驚きを隠せない様子です。
建て替え白紙、住民に部屋買い取り提案
事業主の東急不動産は建て替えを撤回し、住民から部屋を買い取り、マンションを解体する方針を決定。住民には20日までに買い取りに応じなければ仮住まいから退去するよう通知したといいます。
管理組合の理事長は、「戻れるどころか追い出される状況になり、非常に苦しい」と心境を吐露。高齢の住民からは、「明日生きる希望がない。助けてほしい」との悲痛な声が上がっています。
東急不動産「誠意をもって対応」
東急不動産は、「違法建築の状態を早く解決したい。解体に向けて納得してもらえるよう、引き続き誠意をもって対応していく」とコメントしています。現在、約30戸が買い取りに応じているとのことですが、残りの住民の不安は解消されていません。
今後の展望と住民の不安
今回の「北ずれ」問題は、建築業界に大きな波紋を広げています。図面作成時の初歩的なミスが、住民の人生を大きく狂わせる結果となってしまいました。今後の対応、そして残りの住民の生活再建が急務となっています。
この問題は、マンション購入者にとって、建物の安全性だけでなく、図面の正確性も確認することの重要性を改めて示すものとなりました。専門家による綿密なチェック体制の確立など、再発防止策の検討も必要とされています。