「高収入なのに、なぜかお金が貯まらない」。これは多くの共働き夫婦が抱える悩みではないでしょうか。特に、子育て世代においては、日々の忙しさから「時間をお金で買う」選択をしがちです。家計再生コンサルタントでFP(ファイナンシャルプランナー)の横山光昭氏が指摘する、世帯年収1600万円を超える30代夫婦の典型的な家計破綻例から、その実態と背景を深掘りします。
ケーススタディ:高収入家庭の家計実態
都内在住の会社員、内田ユキオさん(仮名・38歳)とアパレル販売員の妻・マサミさん(同・38歳)は、夫婦合わせて手取り月収74万円、年収に換算するとボーナス込みで1600万円を超える高所得世帯です。社宅住まいで住居費も抑えられているにもかかわらず、現在の貯蓄額は400万円に届いていません。
毎月の生活費は住居費を除いて56万3000円にも上り、手元に残るのはわずか7万円前後。夫婦合計で年間450万円にもなるボーナスも、旅行や家電購入といった特別支出で大半が消えてしまうのが現状です。「これから長女(7歳)と次女(4歳)の教育費がかかるので貯めたい」と相談に訪れた彼らの家計簿は、FPが「貯まらない人の傾向が凝縮された典型例」と評するものでした。
高収入夫婦の家計管理、お金が貯まらない原因をFPが分析
貯まらない家計に共通する「お金で時間を買う」という背景
内田家の家計簿をさらに詳しく見ると、その支出規模は一般的な4人家族と比較して突出しています。特に顕著なのが、月々23万円にものぼる食費・外食費です。その他、水道光熱費が4万円、日用品が3万5000円と、細部にわたって高額な出費が目立ちます。
妻のマサミさんは、その理由を「夫婦ともに忙しく、時間をお金で買っている生活だから」と自己分析します。夫は早朝から深夜まで仕事で家を空け、家事育児はマサミさんのワンオペ状態です。自身も平日朝から立ち仕事で、夕方には保育園と学童に子供たちを迎えに行き、帰宅後は休む間もなく子供の世話と山積みの家事業務に追われる毎日。
「要領よくこなせればいいのですが、料理を始め家事全般が苦手で……。もう割り切って、家事はお金をかけて“時短”に徹することにしたんです」とマサミさんは語ります。忙しさのあまり、便利なサービスや時短グッズに頼りたがる気持ちは痛いほど理解できます。しかし、こうした「お金で時間を買う」選択が、結果として家計を圧迫し、貯蓄を困難にしている実態が浮き彫りになりました。
FPが指摘する「貯まらない典型例」
多忙な共働き夫婦にとって、時間効率を優先するライフスタイルは魅力的です。しかし、家計再生コンサルタントの横山氏は、内田夫妻の家計状況が、まさに「お金が貯まらない人の傾向が凝縮された典型例」であると指摘します。日々の生活の中で、手間を省くための支出が積み重なり、それが意識しないうちに大きな金額となって、貯蓄を阻害しているのです。
特に、食費・外食費の高騰は、外食や惣菜、宅配サービスへの過度な依存を示唆しています。これらは確かに時間節約に繋がりますが、自炊に比べて費用は格段に高くなります。また、日用品や光熱費の細かな見直しを怠ることも、高収入であるという安心感から生じる「ザル家計」の典型的な特徴と言えるでしょう。
まとめ
高収入であっても、支出管理が伴わなければ貯蓄は一向に進まないという現実が、内田夫妻の事例から明確になりました。多忙な現代において「時間をお金で買う」という選択は避けられない側面もありますが、それが過度になると家計に大きな負担をかけることになります。ファイナンシャルプランナーの助言は、こうした見落とされがちな支出の「盲点」に光を当て、具体的な改善へと繋げる第一歩となるでしょう。自身の家計を客観的に見直し、適切な管理を行うことが、将来に向けた安定した貯蓄形成への鍵となります。
参考文献:
- Yahoo!ニュース (2025年8月2日). 「高収入なのに貯まらない家計」FPが指摘する典型例。PRESIDENT Online掲載.
https://news.yahoo.co.jp/articles/765adce5e19dd514d5cd2d5f2029e8347c654334