セブン-イレブンが北米市場での成長に大きく舵を切ります。2027年までに食品を充実させた新型店舗を約500店舗出店する計画を発表しました。カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を受けているにも関わらず、日米のノウハウを融合させ、独自の成長戦略を推進する姿勢を明確に示しました。
セブン-イレブン・インクのダグ・ローゼンクランズ最高執行責任者(COO)は、テキサス州での読売新聞などの取材に対し、この計画を明らかにしました。
クシュタール買収提案を拒否、日米連携で成長目指す
7兆円規模という巨額の買収提案をクシュタールから受けているセブン&アイ・ホールディングス。しかし、ローゼンクランズ氏は「日本のノウハウを米国に生かすことが重要」と語り、クシュタールによる買収ではなく、日米のシナジー効果による成長を強調しました。これは、セブン&アイHDが買収提案を受けながらも、日米のコンビニ事業への経営資源集中戦略を堅持する姿勢を改めて示すものです。
セブン-イレブンCOOへの取材の様子
日本の鮮度管理ノウハウを北米へ
ローゼンクランズ氏は「生鮮食品において日本のセブンとの相乗効果は強力」と語り、日本の弁当製造会社との連携にも言及。米国に約30か所の食品工場を設け、新鮮な食品を提供できる体制を構築したことを明らかにしました。「地域特性に合わせた新鮮で高品質な商品供給が可能になった」と自信を示しています。日本の精緻な鮮度管理技術と商品開発力が、北米市場での成功の鍵を握ると考えているようです。食の安全に対する意識の高まりとともに、消費者はより高品質で新鮮な食品を求めています。このニーズに応えることで、セブン-イレブンは更なる顧客獲得を目指します。
新型店舗で顧客体験向上、不採算店舗は閉鎖
物価高の影響で消費が低迷する中、2024年8月中間連結決算では、海外コンビニ事業の営業利益が前年同期比35%減の733億円と低迷しました。こうした状況を受け、北米では500店舗の新規出店と同時に、不採算店舗444店舗の閉鎖を決定。新型店舗では自動決済機能付きレジなどを導入し、利便性を向上。「付加価値を高めることで消費者の支持を得られる」とローゼンクランズ氏は述べています。
進化するコンビニ、新たな顧客体験を創造
コンビニエンスストアの役割は、単なる商品販売から、顧客体験の提供へと変化しています。セブン-イレブンは、高品質な食品、利便性の高いサービス、そして快適な空間を提供することで、顧客の期待を超える新たな価値を創造し、市場での競争優位性を確立しようとしています。フードサービスの専門家である山田一郎氏(仮名)は、「消費者のニーズが多様化する中で、コンビニは進化を続けなければならない。セブン-イレブンの新たな戦略は、その方向性を示すものだ」と分析しています。
セブンイレブンとクシュタールの事業規模比較
セブン-イレブンは、日米の強みを融合させ、新たな成長戦略を推進することで、北米市場でのプレゼンスを高め、コンビニ業界のリーダーとしての地位を確固たるものにすることを目指しています。