現代社会において、スマートフォンはもはや生活必需品。しかし、その便利さの裏に潜む脳への悪影響をご存知でしょうか?この記事では、スマホ依存が脳に及ぼす様々な影響について、東北大学教授・川島隆太氏の著書『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』(扶桑社)を参考にしながら詳しく解説します。スマホとの付き合い方を見直し、健やかな脳を保つためのヒントを探ってみましょう。
スマホ依存で子どもの脳に異変?発達阻害の可能性も
近年、スマホやタブレットなどの電子機器が急速に普及し、子どもたちの生活にも深く浸透しています。しかし、これらの長時間利用は、子どもの脳に深刻なダメージを与える可能性があることが、科学的な調査で明らかになっています。
東北大学で行われた研究(※Takeuchiら Human Brain Mapping 2018)によると、スマホやタブレットの使用時間が長い子どもは、大脳の約3分の1の領域と大脳白質の発達が停滞する傾向が見られました。さらに、前頭前野の活動低下による情動抑制の困難さ、いわゆる「キレやすい」状態も確認されています。
子ども時代の脳は、家族や友人とのコミュニケーション、遊びや運動を通して刺激を受け、健やかに発達していきます。しかし、スマホに夢中になるあまり、これらの貴重な機会が失われ、脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
スマホを使う子供
大人でも安心できない!スマホ依存が引き起こす集中力低下
では、脳が成長した大人はスマホの影響を受けないのでしょうか?残念ながら、そうではありません。大人であっても、スマホへの依存は脳に悪影響を及ぼします。
その代表的な例が、集中力の低下です。スマホで情報検索や動画視聴をしていると、関連動画や広告などが自動的に表示されます。これにより、私たちの意思とは無関係に、次々と異なる情報が目に飛び込んできます。一つの情報に集中しようとしても、別の情報に注意が逸らされてしまい、集中力を維持することが困難になります。
心理学では、このように様々な情報が割り込み、注意が散漫になる現象を「スイッチング」と呼びます。デジタルコンテンツは、多くの動画を視聴させることで収益を上げる仕組みになっているため、視聴者の集中力を意図的に途切れさせ、他のコンテンツに興味を向けさせるように設計されていることが多いのです。この「スイッチング」を繰り返すことで、脳はスマホを使っていない時でも集中力が低下し、注意力散漫な状態になってしまうのです。
記憶力低下も?スマホの功罪
料理研究家の佐藤恵美子さんは、「スマホでレシピを検索するようになり、以前のようにレシピを覚えなくなってしまった」と話しています。これは、スマホの便利さに頼りすぎることで、記憶力が低下する一例と言えるでしょう。手軽に情報を得られるようになった反面、自身の記憶力を使う機会が減り、脳の機能が衰えてしまう可能性があるのです。
スマホと賢く付き合うために
スマホの便利さは否定できませんが、その使い方には注意が必要です。子どもも大人も、スマホとの適切な距離感を保ち、脳への悪影響を最小限に抑えることが重要です。
例えば、スマホの使用時間を制限したり、デジタルデトックスの時間を作ったりするなど、意識的にスマホから離れる時間を取り入れることが有効です。また、読書や運動、趣味など、スマホ以外の活動を楽しむことで、脳を活性化させ、集中力や記憶力の維持・向上に繋げましょう。
この記事が、皆様のスマホとの付き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。ぜひ、ご自身の生活習慣を振り返り、健やかな脳を保つための工夫をしてみてください。