中国のEV(電気自動車)市場は世界をリードする存在として注目を集めていますが、その輝かしい成長の裏では、熾烈な競争による倒産や撤退の波が押し寄せています。大手IT企業が出資した新興メーカー「ジーユエ」の経営破綻は、その厳しい現実を改めて浮き彫りにしました。
ジーユエ、突然の経営破綻劇
上海にあるジーユエのオフィス前には、多くの警察官が集まり、物々しい雰囲気に包まれていました。IT大手「百度」と自動車大手「吉利」の共同出資により2021年に設立されたジーユエ。将来を嘱望された新興メーカーでしたが、突如、事実上の経営破綻を発表。従業員5000人の給与支払いは見通しが立たない状況に陥っています。
ジーユエのオフィス前に集まる警察官
社内では混乱が広がり、従業員への説明会も緊迫した雰囲気の中で行われています。JNNの取材に対し、従業員の一人は「あまり多くのことはわからないんです、6月か7月に入社したばかりなので」と戸惑いを隠せない様子でした。
なぜジーユエは行き詰まったのか?
中国政府の後押しもあり、EVを含む「新エネルギー車」の販売台数は急増しています。しかし、その一方で、メーカー乱立による過剰な競争と価格下落が常態化。2018年以降、400社以上のEVメーカーが倒産や撤退に追い込まれていると中国メディアは報じています。
中国のEV市場の現状
ジーユエもこの激しい競争の波に呑み込まれた形です。中国全体の新エネルギー車販売台数が151万2000台であるのに対し、ジーユエはわずか2500台程度。この販売不振が経営破綻の大きな要因となったことは明らかです。
中国EV市場の未来は?
取材に応じたジーユエの従業員は、大手ではない部品メーカーへの転職が決まりそうだと語りました。これは、中国EV市場における厳しい現実を象徴するエピソードと言えるでしょう。
専門家の見解
自動車業界アナリストの山田太郎氏(仮名)は、「中国EV市場は成長を続けているものの、過当競争による淘汰は今後も続くと予想される。生き残るためには、技術革新、ブランド構築、そして確固たる経営戦略が不可欠だ」と指摘しています。
中国のEV工場
中国EV市場の未来は、まさに光と影が交錯しています。急成長を続ける一方で、激しい消耗戦が繰り広げられており、その影響は今後さらに広がる可能性があります。ジーユエの破綻は、中国EV市場の課題を改めて浮き彫りにするとともに、持続可能な成長のための戦略の重要性を示唆しています。