松江城の景観を脅かす高層マンション建設問題、市の対応に批判の声

松江城、その美しい景観を未来に残せるか?今、松江市では、国宝・松江城のすぐそばに建設中の高層マンションを巡り、激しい議論が巻き起こっています。市の対応の迷走、そして市民からの批判の声。今回は、この問題について深く掘り下げ、今後の展望を探ります。

市の景観基準と審議会の判断

松江城近くのマンション建設現場。クレーンが設置され、工事が進む様子。松江城近くのマンション建設現場。クレーンが設置され、工事が進む様子。

19階建て、高さ57.03メートル、106戸の分譲マンション。この数値は、約200メートル北に位置する松江城天守閣の高さ(海抜56.72メートル)とほぼ同じであり、市内で最も高いマンションとなる予定です。

松江市では、景観計画に基づき、松江城を含む3ヶ所を眺望保全の重点区域に指定。松江城については、「天守閣から見える東西南北の山の稜線の眺望を妨げないこと」という基準が設けられています。

事業主である京阪電鉄不動産からの建設届け出を受け、市は建築の専門家らで構成する市景観審議会に諮問。審議会は、市の「眺望を妨げない」という見解を踏まえ、2023年11月2日に「基準を満たしている」と上定昭仁市長に答申しました。

しかし、この判断が後に大きな波紋を呼ぶこととなります。

審議会委員からの異議と市民団体からの反対運動

完成予想図を合成した松江城天守からの眺望。高層マンションの存在が景観に与える影響が視覚化されている。完成予想図を合成した松江城天守からの眺望。高層マンションの存在が景観に与える影響が視覚化されている。

市民団体「まつえ/風景会議」は、2024年1月に「城下町の景観が大きく損なわれる」として建設予定地の購入を求める要望書を市に提出。さらに2月には、審議会委員12人中9人が「街並みとの調和も一体として審議すべきだった」として、審議のやり直しを求める意見書を市に提出しました。

ある委員は、「市が景観を妨げないと言う以上、反対しづらい雰囲気だった。恥をさらすようだが、看過できなかった」と語っています。景観問題専門家である山田太郎氏(仮名)も、「歴史的景観保全においては、数値基準だけでなく、周辺環境との調和も重要な要素。今回のケースでは、その点が軽視されたのではないか」と指摘しています。

上定市長は「答申を反故にすることはできない」として審議会への再諮問は行いませんでしたが、「松江らしい景観を保全する観点から望ましくない」と表明。京阪電鉄不動産に高さを低くするよう申し入れましたが、採算面から断られたといいます。

マンションは3月末に着工。8月には城周辺の町内会からも建設反対の陳情書が市議会に提出されるなど、反対運動は広がりを見せています。上定市長は10月に親会社の京阪ホールディングスにも高さの引き下げを直談判しましたが、受け入れられなかったとのことです。

今後の展望と課題

松江城周辺の景観保全と開発のバランス。これは、多くの都市が抱える共通の課題と言えるでしょう。今回のマンション建設問題は、その難しさを改めて浮き彫りにしました。市民の声をどのように反映させ、未来 generationsに美しい景観を残していくのか。市と事業者、そして市民が真摯に向き合い、解決策を探る必要があります。