鹿児島県十島村の悪石島で5日午前6時29分ごろ、震度5強の地震が発生しました。気象庁によると、震源地はトカラ列島近海、震源の深さは19キロ、マグニチュードは5.4でした。この地震による津波はありませんでした。十島村によれば、悪石島にいた全員の無事が確認され、家屋の被害も報告されていません。一方、この日はSNSで「7月5日に大災害が起きる」という根拠のない「予言」が拡散しており、今回の地震との関連が注目されました。
トカラ列島近海の群発地震と気象庁の見解
気象庁は記者会見を開き、今回の地震について詳細な情報を提供しました。同庁の海老田綾貴地震津波監視課長は、トカラ列島近海では6月21日以降、7月5日午前7時までに震度1以上の地震が1300回を超えて発生していると明らかにしました。これはこの地域で活発な群発地震活動が続いていることを示しています。
気象庁は、この日の悪石島での地震と「7月5日に大災害が起きる」というSNSなどで広がった「予言」との関連性について問われ、明確に否定しました。海老田課長は「全くの偶然であり、科学的な因果関係はない」と述べました。さらに、日本の地震発生頻度について解説し、「震度1以上の地震は1年間でだいたい2000回以上、多い年には6587回(2016年)発生しており、平均すると1日に10回以上、日本のどこかで起きている」と説明。「『予言』を言っていると、たまたま具体的な日時や場所と重なってしまうことはあり得る」と指摘し、安易な関連付けに警鐘を鳴らしました。
「7月5日予言」の根拠と影響
SNSで話題となった「予言」は、漫画家たつき諒さんの2021年の著書「私が見た未来 完全版」が根拠とされています。この本には、著者が大災害の夢を見た時刻が「1999年7月5日午前4時18分」、予知夢の中で災難が起きるのが「2025年7月」であると記されています。また、「日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂」「太平洋周辺の国に大津波が押し寄せ、高さは東日本大震災の3倍」といった記述もあり、この本は100万部を超えるベストセラーとなっています。
根拠のない「7月5日大災害予言」の情報は国内だけでなく海外にも広がり、旅行者の予約キャンセルや香港からの航空便の減便といった具体的な社会的な影響が出ました。「トカラ列島で地震が発生すると、ほかの地域で大地震が発生する」といった不確かな情報も同時に拡散しました。5日早朝の「予言された地震発生時刻」に合わせて、SNS上では状況を実況する投稿や生中継が行われるなど、一種の騒ぎとなっていました。
繰り返される災害時の「予言」と「デマ」
地震や災害発生時に「予言」や「デマ」が拡散する現象は、過去にも何度も繰り返されています。2011年3月の東日本大震災直後には、「関東大震災が起きる」とする不確かな情報がメールで出回りました。2016年4月の熊本地震後には、「動物園からライオンが逃げた」という偽の画像付き投稿がSNSで拡散し、投稿者が偽計業務妨害容疑で逮捕される事態となりました。記憶に新しい2024年1月の能登半島地震についても、「人工地震」であるとする根拠のない陰謀論が広がるなど、災害に乗じたデマは後を絶ちません。今回の悪石島の地震と「7月5日予言」を巡る騒動も、こうした災害時における情報の混乱の一例と言えます。
今回の悪石島での震度5強の地震は、日頃から地震が多い日本の自然な地殻活動の一部であり、特定の「予言」と結びつける科学的根拠はありません。気象庁は、地震発生時には冷静に対応し、災害情報は公的機関の公式発表に基づいて確認することの重要性を改めて呼びかけています。
出典: 報知新聞社