誘拐犯への死刑確定判決:28年間の苦難を経て、楊妞花さんが手にした正義

5歳の時に誘拐され、28年間もの間、家族と離れ離れに暮らしてきた楊妞花さん。彼女を誘拐し売却した犯人、余華英被告に対し、貴州省高級人民裁判所は死刑判決を確定させました。このニュースは中国社会に大きな衝撃を与え、人身売買の撲滅に向けた取り組みの重要性を改めて浮き彫りにしました。

28年越しの再会、そして両親との永遠の別れ

1995年、貴州省貴陽市。5歳だった楊さんは、隣に住む女に誘拐され、遠く離れた河北省邯鄲市の農村へと売られました。名前を変えられ、別人としての人生を歩むことを強いられた楊さん。成人後、記憶を頼りに実の家族を探し始めました。

2021年、ソーシャルメディアを通じて、ついにいとこと連絡が取れるという劇的な展開を迎えます。しかし、再会を待ち望んでいた両親は既に他界していました。娘を失った悲しみと罪悪感に苛まれ、父親は酒に溺れ、母親も心労が重なり、この世を去っていたのです。

楊妞花さんと家族の写真楊妞花さんと家族の写真

誘拐犯逮捕、そして明らかになった余罪

「誘拐犯を捕まえ、必ず処罰させる」という強い決意のもと、楊さんは警察に捜査を依頼。2022年6月、ついに余華英被告が逮捕されました。その後の捜査で、余被告は他にも16人の子供を誘拐・売却していたことが判明。中には実の息子も含まれており、その冷酷さに人々は言葉を失いました。

死刑確定、そして被害者家族の想い

2023年10月、一審で死刑判決を受けた余被告は控訴しましたが、貴州省高級人民裁判所はこれを棄却。判決理由として、裁判所は「子供を商品のように扱い、尊厳を著しく傷つけた」「被害者家族にも深刻な被害を与えた」と指摘しました。

裁判所の様子裁判所の様子

楊さんは、「3年間支えてくださった皆様に感謝します。両親の墓前に報告し、少しでも慰めたい」と語りました。また、同じように人身売買の被害に遭った諶江海さんも、判決後、涙を流しながら「体が震えた」と語りました。

中国における人身売買問題の根深さ

当局の努力にも関わらず、中国では人身売買が後を絶ちません。2023年10月には、江蘇省無錫市で生後14日の乳児が売買された事件が発覚。容疑者らは今年だけで18人の子供を売買していたとされています。

このような悲劇を繰り返さないために、中国政府は2022年に人身売買との「戦争」を宣言。取り締まりの強化や処罰の厳罰化など、様々な対策を講じています。 専門家の李梅氏(仮名)は「人身売買は社会の根深い闇であり、撲滅には法整備だけでなく、社会全体の意識改革が必要だ」と指摘しています。

今後の課題と希望

楊さんの事件は、人身売買の悲惨さを改めて世に知らしめ、対策強化の必要性を強く訴えるものとなりました。 一人でも多くの子供が家族のもとへ帰れるように、そして二度とこのような悲劇が起こらないように、社会全体で取り組んでいく必要があるでしょう。