宇宙開発の新たな時代を迎え、NASAの予算問題が深刻化しています。トランプ大統領の再選、マスク氏の政府効率化省議長就任、そしてアイザックマン氏のNASA長官就任という異例の布陣により、NASAの将来、特に巨額の予算を投じられているSLS(スペースローンチシステム)の運命に注目が集まっています。
老朽化施設と慢性的な予算不足
NASAは、全米に155もの施設を保有していますが、その多くが老朽化し、維持費が膨らんでいます。2013年にはNASA監察総監室(OGI)が施設の約2割が十分に活用されていないと指摘。しかし、施設縮小や閉鎖には既得権益や雇用問題が絡み、抜本的な改革は難航していました。2025年度予算は前年度比2%増の254億ドルですが、インフレなどを考慮すると焼け石に水。
NASAの施設
厳しい現実:人員削減とプロジェクト中止
予算不足の影響は既に現場に及んでいます。2024年2月、JPL(ジェット推進研究所)で530人、11月にはさらに325人が解雇されました。火星サンプルリターンミッション(MRS)関連のスタッフも含まれており、計画の遅延が懸念されています。また、X線望遠鏡「チャンドラ」の予算も大幅削減され、運用停止の可能性も出てきました。さらに、月面探査車「バイパー」の開発中止も決定。完成間近だったにも関わらず、他のミッションへの予算配分を優先せざるを得ない厳しい状況が浮き彫りになっています。宇宙開発評論家の星野智氏は、「短期的成果を求める圧力が高まり、長期的なビジョンに基づいたプロジェクトが犠牲になっている」と警鐘を鳴らしています。
SLS:巨額予算と不透明な未来
そして、最大の焦点がSLSです。1回の打ち上げに6300億円もの巨費がかかるこの超大型ロケットは、アルテミス計画の中核を担う存在。しかし、その巨額なコストと開発の遅延は、批判の的となっています。
SLSロケット
新体制下での宇宙開発の行方
トランプ、マスク、アイザックマンという強力なリーダーシップを持つ新体制は、SLSの運命をどのように左右するのでしょうか?既存プロジェクトの大幅な見直しや予算削減は避けられないと見られています。しかし、それには様々な抵抗勢力との対立も予想されます。宇宙開発の未来は、彼らの決断にかかっています。「民間企業の積極的な参入を促し、より効率的な宇宙開発を目指す」と語るマスク氏の言葉は、今後のNASAの大きな方向性を示唆していると言えるでしょう。
今後の展望
NASAの改革は、茨の道となることが予想されます。しかし、それは同時に、新たなイノベーションとより持続可能な宇宙開発への道を切り開く可能性も秘めています。今後の動向を注視していく必要があります。