この度、モンゴル国から国賓として御招待を頂き、二人で同国を訪問できたことをうれしく思います。フレルスフ大統領御夫妻には、歓迎式典や晩餐会など、心をこめて御準備くださり、また、ナーダムの開会式をはじめ弓射やシャガイ、競馬など様々な競技を御一緒頂き、素晴らしいおもてなしを頂いたことに深く御礼を申し上げます。また、行く先々でモンゴルの方々に温かく迎えて頂いたことは、うれしく、有り難いことでした。両国の国民の相互理解が更に深まり、日本とモンゴルの友好親善と協力関係がより一層進展することを心から願っています――。天皇皇后両陛下は、モンゴル国への国賓としての公式訪問を終えられ、冒頭のようなご感想を文書で発表されました。今回の訪問は、両国の絆を一層強固にし、未来へ向けた新たな関係構築の礎となる重要な機会となりました。
天皇皇后両陛下、歴史的なモンゴル公式訪問を終え帰国
7月6日から国賓としてモンゴルを公式訪問されていた天皇、皇后両陛下は、13日夕方、政府専用機で羽田空港にご帰国されました。タラップを降りられた両陛下は、出迎えられた秋篠宮ご夫妻らと笑顔で言葉を交わされ、訪問の成功を物語る和やかな雰囲気に包まれました。今回のモンゴル訪問中、佳子さまの父君である秋篠宮さまが皇嗣として国事行為の臨時代行を務められました。これは、天皇陛下がご即位されて以来、インドネシア、イギリスに続く3回目の外国公式訪問であり、歴代の天皇、皇后としては初めてのモンゴル訪問という歴史的な意義を持つものとなりました。
戦没者慰霊と両国の絆を深める交流
両陛下は、7月8日に首都ウランバートル郊外にある「日本人死亡者慰霊碑」を訪問されました。先の大戦後、旧ソ連軍の捕虜となりモンゴルで命を落とされた日本人抑留者は約1700人に上るとされており、両陛下は慰霊碑に花を供え、深々と拝礼され、黙祷を捧げられました。その後、出迎えられたご遺族には、「本当にご苦労をされましたね」と、ねぎらいの言葉をかけられました。
同日夜、両陛下はフレルスフ大統領夫妻が主催する晩餐会に出席され、天皇陛下は次のようなお言葉を述べられました。「人と人とのつながりや思いやりのありがたさを実感するのは、苦しいときであると思います。日本が1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、そして2024年の能登半島地震などの大きな災害に見舞われたとき、モンゴルの人々はすぐさま支援の手を差し伸べてくれました。私たち日本人を勇気づけていただいたモンゴルの方々の温かい気持ちを、私たちは決して忘れません。(中略)今後、両国の懸け橋となる若い世代が先人たちの歩みを受け継ぎ、広大な土地にまかれた協力の種が多くの花を咲かせてほしいと思います。そして、若い人たちが、その新たな活力を存分に発揮することで、両国関係が、モンゴルの青き大空・テンゲルに向けてさらなる高みへとどこまでも発展していくことを願います」。
また、陛下は晩餐会で、モンゴル国立馬頭琴交響楽団が演奏する日本の歌『浜辺の歌』にビオラで加わられ、出席者から大きな拍手を浴びられました。『浜辺の歌』は、日本人抑留者の間で歌われ、心の支えとなったといわれる歌です。
「ナーダム」参加と大自然との触れ合い
7月11日、両陛下はモンゴル最大の国民的スポーツの祭典である「ナーダム」の開会式に出席されました。大統領夫妻とともに弓射競技などを視察され、選手たちに温かい拍手を送られました。翌12日には、ウランバートル近郊の草原で「ナーダム」の競馬競技をご観戦。100頭以上の5歳馬が約20キロもの草原を駆け抜ける競馬は、ナーダムの花形競技として知られています。馬への負担を考慮し、騎手は10歳前後の子どもが務めています。抜けるような青空の下、両陛下は大統領夫妻とともにゴール付近で熱戦を見守り、モンゴルの伝統文化を深く楽しまれました。
その後、ホスタイ国立公園へ移動されました。この公園の自然保護区では、自然界で絶滅したとされる最古の野生馬モウコノウマ(タヒ)が保護されており、両陛下はタヒの保護活動などについて説明を受けられました。
皇室外交の未来へ:愛子さま、佳子さまのご動向
今回のモンゴル訪問に続いて、皇室の国際親善活動は今後も活発化する見込みです。天皇陛下は、将来の皇室外交について次のように述べられました。「愛子のラオス訪問については、ラオス政府から本年11月に御招待いただいたことに対し、愛子はもちろん、私と雅子も大変ありがたいことと思っております。(中略)私と雅子からもこれまでの外国訪問の経験を踏まえつつ、愛子に助言をしていくことができればと考えています。
ブラジル公式訪問からの帰国を昭和天皇、香淳皇后に報告する佳子さま
なお先般ブラジルを訪問した佳子内親王から帰国後の挨拶を受けた際には愛子も同席しており、佳子内親王からブラジル訪問の様子などを詳しく聞いておりましたので、こうした機会も通じて、愛子自身も皇室の外国訪問について学ぶことができたのではないかと思いました」。この発言から、愛子さまの国際舞台でのご活躍への期待と、皇室全体で国際親善の役割を担っていく姿勢が伺えます。
結び
天皇皇后両陛下のモンゴル公式訪問は、両国の歴史的な友情を再確認し、経済、文化、人的交流における協力関係を一層深める貴重な機会となりました。戦没者への慰霊、文化交流へのご参加、そして自然保護への関心を示された両陛下のご姿勢は、モンゴル国民の心に深く刻まれたことでしょう。この訪問が、日本とモンゴルの「青き大空・テンゲル」の如く、無限に広がる友好関係の未来へと繋がる新たな一歩となることを心より期待いたします。