クリスマスの華やかな雰囲気に包まれたドイツ東部マグデブルクで、悲劇的な事件が発生しました。クリスマスマーケットに車が突っ込み、多くの人々が巻き込まれるという衝撃的な出来事。容疑者はサウジアラビア出身の医師という特異な経歴の持ち主で、その動機や背景に注目が集まっています。今回の事件は、来年2月に迫った連邦議会選挙にも影を落とす可能性があり、特に移民排斥を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への影響が懸念されています。
サウジアラビア出身医師の複雑な過去:亡命、精神科医、そして反イスラム主義活動家へ
2006年に母国サウジアラビアでの迫害を理由にドイツへ亡命した容疑者の男。更生施設で精神科医として勤務していたものの、最近では「就労不適格」と判断されていたといいます。地元メディアによると、長年サウジアラビア人女性の国外亡命を支援していたという情報も。
マグデブルクのクリスマスマーケットに突っ込んだ車
警察は事件直後から男の取り調べを開始。ドイツの有力紙ウェルトは、容疑者が反イスラム主義の活動家であり、寛容な移民政策によってドイツが「イスラム化」することを懸念していたと報じています。さらに、今年5月には自身のSNSでイスラム教徒の入国制限を主張し、AfDへの共感を示していたという情報も明らかになりました。精神科医としての顔、亡命者としての過去、そして反イスラム主義活動家としての現在。複雑に交錯する男の背景が、事件の真相解明をより困難にしています。
AfDの動向:事件を非難しつつも、移民問題で支持拡大を狙うか?
AfDの共同党首であるアリス・ワイデル氏は、事件発生直後にX(旧Twitter)で「衝撃的だ。この狂気はいつ終わるのか」と投稿し、事件を非難する姿勢を示しました。しかし、事件現場となったザクセン・アンハルト州を含む旧東ドイツ地域はAfDの支持基盤であり、今回の事件がAfDの支持拡大に利用される可能性も否定できません。
ドイツ社会の分断:移民問題が選挙の争点に、更なる亀裂の深まりも
6月に行われたザクセン・アンハルト州の地方選挙では、AfDが州全体で最多得票を獲得するなど、着実に支持を伸ばしています。シリアのアサド政権崩壊を受け、シリア人難民の早期帰還を求めるなど、イスラム系住民への圧力を強めるAfD。今回の事件も相まって、来年2月の連邦議会選挙では移民・難民問題が大きな争点となることが予想されます。
事件の真相究明はもとより、移民政策、社会統合、そして政治のあり方など、ドイツ社会は多くの課題に直面しています。今回の事件をきっかけに、社会の分断がさらに深まることが懸念されます。