若者が海外から日本へドラッグを密輸する「運び屋」に利用されるケースが後を絶ちません。特に多額の借金を抱える女子学生が狙われるという社会問題は、その背後にある国際的な麻薬組織の巧妙さと残酷さを示唆しています。本稿では、有名私大に通う女子大生レナ(仮名・20歳)が、夜の仕事で背負った売掛金の返済のため、いかにしてこの危険な運び屋稼業に深く足を踏み入れていくのか、その実態に迫ります。元厚生労働省麻薬取締部部長である瀬戸晴海氏のもとに寄せられた相談を基に、彼女の二度目の海外渡航と、そこで明らかになる闇の側面を詳述します。
若者による薬物密輸の増加とその背景
脅迫と新たな指示:ベトナムへの再渡航
第1回で描かれたレナの初めての「運び」は辛うじて完了しました。しかし、その安堵も束の間、半月後には再び新たな指示がテレグラムを通じて彼女のもとに届きます。メッセージには「I’d like you to go to Ho Chi Minh City next month. Please book the flight and hotel for 3 nights and 4 days.(来月はホーチミンです。3泊4日、フライトとホテルの予約お願いします)」と記載されていました。指示は丁寧な言葉遣いでしたが、レナを最も震え上がらせたのは、メッセージに添付されていた一枚の画像でした。そこには、彼女の姉シーラ(仮名)の姿が写っていたのです。
この明白な脅迫に対し、レナは「メッセージの言葉は丁寧だったけど、送りつけてきたのがお姉ちゃんの写真だったから震えちゃいました。『やっぱり犯罪なんだな』とショックを受けました」と語っています。しかし、いまさら誰かに相談することもできず、指示を断れば姉が危険に晒されるかもしれないという恐怖から、レナは急いで渡航スケジュールを組み、テレグラムで連絡を取るしかありませんでした。
臓器を模したような形状で運搬される薬物
ホーチミンでの再接触と隠された感情
二度目のホーチミンでの「運び」でも、前回と同じ男女がレナの滞在するホテルに現れました。女性からは例の「ブツ」の入った袋と、「TAO MEO(タオメオ)」というベトナムの果実酒2本が手渡されました。男性は「つらいと思うけど頑張って。お酒は免税品だから、手荷物扱いで持って帰れるよ」と、前回同様に優しい言葉をかけました。
しかし、レナは今回の接触で、この男性、利久斗(仮名・24歳)の顔に新しい傷跡があることに気づきます。彼の瞳はどこか寂しげで、深い悲しみを湛えているように見えたといいます。レナは彼のことが気になり始め、「相談したいことがあるの」と小声で伝え、自身のスマートフォンの番号を書いたメモを彼に手渡しました。この瞬間、レナの心に微かな変化が芽生えたようにも見えますが、同時に彼女自身が国際的な薬物犯罪の深い闇へと、さらに引き込まれていく危険性もはらんでいます。
まとめ
女子大生レナのケースは、多額の債務を抱える若者がいかにして国際的な薬物密輸組織の標的となり、危険な「運び屋」として利用されていくかを示す一例です。一度足を踏み入れると、家族を人質にとられるなど、巧妙な手口で抜け出すことが困難になる実態が浮き彫りになりました。今回のホーチミン再渡航では、脅迫の手口がエスカレートし、闇バイトや国際犯罪の危険性が改めて浮き彫りになっています。このような事例は、薬物乱用の問題だけでなく、若者が陥りやすい社会的な脆弱性と、それにつけ込む犯罪組織の存在に対し、社会全体での注意喚起と対策が急務であることを強く訴えかけています。
参考文献
- 瀬戸晴海. 「有名私大に通う女子大生が“ドラッグの運び屋”に堕ちるまで…「タンポンよりも少し太い“ブツ”をえずきながら丸呑みしたんです」」. デイリー新潮.
- 上記記事をYahoo!ニュースが配信. 「来月はホーチミンです」. Yahoo!ニュース.





