日本で広がる「読書通帳」サービス:SNSで話題、読書離れに挑む新たな試み

近年、日本の公共図書館で導入が進み、SNSでも大きな話題を呼んでいる「読書通帳」サービスが注目を集めています。銀行の預金通帳のように読書の記録を可視化するこのシステムは、特に子どもの読書習慣を育む上で効果的なツールとして期待されています。

「読書通帳」とは?山口県から始まった画期的な図書館サービス

「読書通帳」とは、図書館で借りた本のタイトルや貸し出し日などが銀行の通帳のような冊子に印字されるサービスです。これにより、利用者は自身の読書記録を一覧で確認でき、読書の成果を視覚的に捉えることが可能になります。

このユニークなシステムを開発したのは、IT商社の内田洋行です。約15年前の2010年、山口県の下関市立中央図書館がサービスの特徴と差別化を目指して全国で初めて「読書通帳機」を導入しました。以来、その革新性がメディアでも報じられ、現在では全国約100カ所の公共図書館で活用されています。内田洋行のユビキタスライブラリー部長である坂東紀典氏は、導入当初からメディアの注目を集めたことを振り返ります。

内田洋行が提供する、図書館の貸し出し記録を印字できる「読書通帳」の冊子内田洋行が提供する、図書館の貸し出し記録を印字できる「読書通帳」の冊子

深刻な「読書離れ」に立ち向かう一手:導入の背景と目的

読書通帳が普及する背景には、日本社会における深刻な「読書離れ」の問題があります。特に子どもたちの間で本から離れる傾向が顕著であり、小学校高学年から中学生にかけて、塾や部活動で忙しくなるにつれて読書時間が減少すると指摘されています。文化庁が2024年に実施した「国語に関する世論調査」でも、1カ月に全く本を読まないと回答した人が全体の62.6%に上り、世代を問わず読書習慣の希薄化が浮き彫りになっています。

内田洋行のユビキタスライブラリー部営業1課長の西村貴弘氏は、読書離れを防ぐためには、幼少期からの読書体験の積み重ねが重要であると語ります。その上で、読書通帳が子どもたちの読書への興味を引き出し、習慣化を促す有効な手段であると考えています。多くの図書館が小学校低学年から中学生を対象に読書通帳を配布しており、読書推進の重要な役割を担っています。

読書通帳の「効果」と「今後の展望」

実際に読書通帳を導入した図書館では、貸し出し冊数の増加という目に見える効果が現れています。記録が形になることで、子どもたちがより積極的に図書館を利用し、多くの本に触れるきっかけとなっているのです。

しかし、坂東氏は「本を読むというより、読書通帳に印字するのが目的になってしまう子もいる」という課題も指摘します。それでも、このような「小さなきっかけ」が、子どもたちが本や図書館を好きになる第一歩となることを期待しており、図書館関係者は、読書通帳が読書の世界への扉を開く重要な役割を果たすことを願っています。何万冊もの本が並ぶ図書館という空間に親しみ、その魅力を感じてもらうことが、読書通帳の最終的な目的と言えるでしょう。


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