エルサルバドル。かつてギャング抗争の渦中にあったこの国で、今、劇的な変化が起きています。治安回復の象徴として建設された「テロリスト監禁センター」。“世界一恐ろしい刑務所”とも呼ばれるその内部に迫ります。
ギャング抗争の爪痕と救国の英雄
かつてエルサルバドルは、ギャング抗争により治安が崩壊状態にありました。2015年には、日本の約150倍に相当する殺人事件発生率を記録。国民は恐怖に怯える日々を送っていました。
エルサルバドルの兵士
転機となったのは2019年、ブケレ大統領の誕生です。「治安回復」を最重要課題に掲げ、緊急事態宣言を発令。憲法の一部を制限するほどの強硬策で「ギャング撲滅作戦」を展開しました。
逮捕状なしの拘束と劇的な治安改善
この作戦では、ギャングとのつながりが疑われる人物は逮捕状なしで次々と拘束。人口650万人の国で、約8万人が逮捕されたと言われています。その結果、殺人事件発生率はピーク時の50分の1にまで激減。ブケレ大統領は国民から「救国の英雄」と称賛されるようになりました。
テロリスト監禁センター:鉄壁のセキュリティと隔絶された世界
今回、特別な許可を得て「テロリスト監禁センター」を取材しました。刑務所へ向かう道中、厳重なセキュリティチェックを受け、緊張感が高まります。施設に到着すると、出迎えてくれたのは刑務所職員ではなく政府広報官。そこで、取材に関する注意事項が伝えられました。
中でも印象的だったのは、「受刑者に話しかけてはいけない」というルール。受刑者は家族を含め、外部との接触が一切禁止されているのです。逃走中のギャングメンバーとの接触を防ぐ狙いがあると見られます。
エルサルバドルの刑務所の内部
ギャング撲滅の光と影:人権問題への懸念
治安の劇的な改善は歓迎すべき一方、人権問題への懸念も拭えません。逮捕状なしの拘束や外部との接触禁止など、強権的な手法には批判の声も上がっています。エルサルバドルの治安対策は、国際社会からも注目を集めています。
まとめ:エルサルバドルの未来
ブケレ大統領のギャング撲滅作戦は、エルサルバドルに劇的な変化をもたらしました。しかし、その手法には賛否両論があります。今後のエルサルバドルが、治安と人権のバランスをどのように取っていくのか、注目が集まっています。