高齢化社会の日本で、家族間のお金の問題は残念ながら増加傾向にあります。今回は、実家の預金管理を任せていた兄弟が、親のお金を使い込んでしまったという事例を通して、その対策を相続実務士の視点から解説します。
介護費用をきっかけに発覚した使い込み
58歳の真治さん(男性)は、96歳になる母親を施設に入所させた弟から、事後報告を受けた際に、金銭管理についても不安を抱きました。93歳まで元気だった母親は、2時間ほど離れて暮らす真治さんではなく、近所に住む弟家族に面倒を見てもらっていました。真治さんは、母親から年金だけでは足りないと言われ、毎月10万円から15万円を仕送りしていました。
弟の不可解な行動と隠蔽
母親の施設入所費用について弟に尋ねると、「足りているので心配ない。通帳も管理している」との返事でした。しかし、叔母から、母親は父親の遺族年金を受け取っており、生活に困っていないという話を聞いて、真治さんは疑問を抱きます。父親の遺族年金と母親の年金は2ヶ月で約34万円。真治さんの仕送りも合わせると、十分な金額のはずです。真治さんが弟に通帳の提示を求めると、弟は拒否し、最終的には通帳を捨てたと主張。母親も状況を理解していない様子でした。
高齢者と施設介護のイメージ
専門家の見解:早期発見と証拠確保が重要
相続実務士の山田花子氏(仮名)は、このようなケースは珍しくないと指摘します。「家族間のお金の問題は、感情的なしこりを残すだけでなく、法的措置も複雑になりがちです。早期発見と証拠確保が非常に重要です。」と山田氏。
具体的な対策:成年後見制度の活用
山田氏は、成年後見制度の活用を勧めています。「判断能力が低下した高齢者の財産管理を、家庭裁判所が選任した成年後見人が行うことで、不正な使い込みを防ぐことができます。」
家族信託:信頼できる家族への財産管理
また、家族信託も有効な手段です。「信頼できる家族に財産管理を委託することで、柔軟かつ迅速な対応が可能になります。」と山田氏は説明します。
予防策:透明性の高い金銭管理
このような事態を避けるためには、日頃から透明性の高い金銭管理が重要です。家族間で定期的に収支状況を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
専門家への相談:問題発生前の対策が肝心
「問題が発生してからでは、解決が困難になる場合もあります。問題発生前に、弁護士や相続実務士などの専門家に相談することをお勧めします。」と山田氏は強調します。
まとめ:家族だからこそ、明確なルール設定を
家族間のお金の問題は、誰にでも起こりうる可能性があります。だからこそ、日頃からコミュニケーションを密にし、明確なルール設定を行うことが大切です。今回の事例を通して、家族信託や成年後見制度など、様々な対策があることを知っておきましょう。この記事が、皆様の家族円満の一助となれば幸いです。