高齢化が進む日本では、2025年に団塊の世代が後期高齢者となり、認知症患者も増加の一途を辿ると予測されています。このままでは、患者さんが適切な医療を受けられず、地域医療が崩壊する可能性も懸念されています。本記事では、地域医療の現状と課題、そして真のかかりつけ医の重要性について解説します。
患者さんのたらい回し:ある夏の日の出来事
ある夏の週末、私のクリニックに90歳の男性が家族に連れられて来院されました。1週間前に喉の痛みで耳鼻科を受診し、薬を処方されたものの、その後吐き気と食欲不振が現れ、別の耳鼻科に相談したところ内科受診を勧められたとのことでした。
内科では吐き気止めを処方されましたが、症状は改善せず、水分も摂れなくなってしまったそうです。そして休日診療所でも一時的な処置しか受けられず、途方に暮れた家族がインターネットで検索し、当院を見つけて来院されたのです。
90歳男性の診察の様子
真のかかりつけ医の必要性
診察の結果、男性は風邪をきっかけに脱水症状を起こしており、命の危険もあったことが判明しました。このケースは、専門分化が進んだ現代医療において、患者さんが適切な医療機関に辿り着けず、たらい回しにされるリスクを浮き彫りにしています。
高齢化社会においては、複数の疾患を抱える患者さんも多く、各専門科を連携して包括的に診てくれる医師、つまり「真のかかりつけ医」の存在が不可欠です。真のかかりつけ医は、患者さんの病状だけでなく、生活背景や家族構成なども理解し、適切な医療を提供します。
総合診療医:地域医療の要
真のかかりつけ医として、総合診療医の役割が期待されています。総合診療医は幅広い知識と技術を持ち、様々な症状に対応できるため、患者さんの最初の相談窓口として最適です。必要に応じて専門医と連携し、患者さんにとって最適な医療を提供します。
例えば、東京大学医学部附属病院総合診療科の教授(仮名:佐藤先生)は、「総合診療医は、患者さんの全体像を把握し、最適な医療を提供する上で重要な役割を担っています。高齢化社会において、総合診療医の育成は喫緊の課題です」と述べています。
地域医療を守るために
地域医療を守るためには、総合診療医の育成と配置、そして医療機関同士の連携強化が不可欠です。また、患者さん自身も健康への意識を高め、かかりつけ医と良好な関係を築くことが重要です。
私たちができること
私たち一人ひとりが、地域医療の現状に関心を持ち、健康管理に気を配ることで、医療崩壊を防ぐことに貢献できます。かかりつけ医を持ち、定期的に健康診断を受けることは、早期発見・早期治療につながり、医療費の削減にも繋がります。
地域包括ケアシステムの構築など、行政の取り組みも重要ですが、最終的には地域住民一人ひとりの意識改革が地域医療の未来を左右すると言えるでしょう。