パチンコ業界トップ阿部氏、参院選出馬:崖っぷちからの脱却目指す

近年衰退傾向にあるパチンコ業界が、生き残りをかけて異例の行動に出た。20日に投開票される第27回参議院議員選挙に、業界団体トップである全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の阿部恭久理事長(66)を擁立したのだ。ギャンブル依存症問題や射幸性の抑制から「パチンコ悪玉論」が広がる中、自民党が遊技業界の現役トップを新人として全国比例候補に公認するのは極めて稀なケースである。

パチンコ業界の深刻な衰退を示すイメージパチンコ業界の深刻な衰退を示すイメージ

業界衰退の現状と背景

業界団体幹部によれば、この動きの背景には深刻な業界の危機感がある。2019年、自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」の支援を受け、「全日本遊技産業政治連盟」が発足したのが契機となった。近年、警察庁は射幸性の高いパチンコ・パチスロ機種の撤去を業界に強く求めており、人気の機種が減少し、出玉の少ない遊技機ばかりになった結果、顧客離れが進んでいる。

警察庁のデータによると、パチンコ店舗数は1995年のピーク時1万8244店から減少の一途をたどっている。コロナ禍を経て2021年4月末には8000店を割り込み、今年2月にはついに6000店を切った。人口減少が著しい市町村では特に衰退が顕著であり、人口が多い地域でも商圏内上位のごく一部しか生き残れない状況だ。

生き残りをかけた政治活動

こうした状況に対し、業界は警察庁への働きかけを強化する必要性を感じていた。その強力な後ろ盾として期待されたのが「全日本遊技産業政治連盟」である。連盟のモットーは「遊びの力で 心を元気に」だ。

2022年にはメダルレスで出玉性能が高い「スマートパチスロ(スマスロ)」が導入され、一時的に業績が回復したものの、かつての隆盛にはほど遠い。営業店舗数は毎年約10%のペースで減少しており、このまま衰退を見過ごすことはできないという危機感が募っていた。

過去の参院選では、2019年に自民党元参議院議員の尾立源幸氏を、2022年には同じく自民党元参議院議員の木村義雄氏を業界全体で支援したが、いずれも当選には至らなかった。度重なる失敗を経て、「後がない」状況に追い込まれた業界は、ついに業界団体の現役トップを「組織内候補」として擁立するという手段を選んだのである。

現役トップ擁立という選択

業界団体幹部が語るように、現役の全日遊連理事長こそが、業界の声を国政に届ける上で最も適した人物と判断された。阿部氏はまさに業界のトップ・オブ・ザ・トップであり、その知名度と影響力に期待がかかっている。

パチンコ業界は店舗数減少、規制強化という厳しい現実に直面しており、従来の政治働きかけでは局面を打開できないとの判断から、異例中の異例ともいえる現役理事長の国政進出を決断した。阿部氏の参院選挑戦は、業界の危機感の表れであり、その行方が注目される。

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