第4次安倍晋三再改造内閣が発足し、その人事の目玉であった環境大臣の小泉進次郎さんの発言が物議を醸しています。産経新聞でも小泉さんの発言を「小泉環境相、国連の外交デビュー 原稿読まず英語で演説 『気候変動問題はセクシーに』」(「産経ニュース」23日)と報じていますが、まさにこの「セクシー」発言が国内のみならず海外でも物議を醸しました。
もちろん、英語表現としての「セクシー」は単に性的なものを指すのではなく、挑戦的だとか心が湧くようなという意味合いもあり、またもともとこの発言は隣席の前国連気候変動枠組条約事務局長、フィゲレスさんの表現を受けてのもので、小泉さんらしく挑発的な単語を拾っただけではないかとも言えます。一方で英語話者からすると、国際会議などオフィシャルな場で男性が女性を前に使うのはどうかという反対意見も強く、賛否両論が喧(かまびす)しい実に多難な門出になってしまいました。
世界的な環境問題についていえば、日本は環境負荷を踏まえたうえでのエネルギー政策として、火力・原子力と水力地熱などの各カテゴリーをミックスして供給することを概ねの方針にしています。これらは本来、経済産業省や資源エネルギー庁が担当すべき仕事ですが、先の東京電力福島第1原発事故の影響もあり、電力の一大消費地を抱える東電や、事故現場のある東北電力ではいまだ原発は再稼働できていません。足りない分は当然環境負荷の大きい火力発電所の稼働で補わざるを得ず、そのエネルギーはほぼ全量を輸入に頼る日本の特質上、昨今のイランやサウジアラビアなどの中東問題でエネルギー価格がさらに上昇すれば、簡単に国富が海外に流出するリスクがあります。
かといって、「トイレなきマンション」とまで揶揄(やゆ)される原子力はいずれ全廃へ向かわなければならないとしつつも、再生エネルギーがベースロード電源としての安定供給に程遠い状況では、この火力と原子力を中心に、どう国内のエネルギー需要に向き合うかを考えねばなりません。
今回の小泉さんの問題は、未来の首相候補の一角を担う人気ある若い政治家の根本的な能力が問われるという残念な流れになっていますが、小泉さんが携わる事象はいやが応にも注目が集まります。これを機に、ただの一政治家の発言問題で終わらせることなく、日本のエネルギー安保や環境負荷の問題を中長期のスパンで再考を促すのが、メディアの本来の役割なのではないか、と思えてなりません。
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【プロフィル】山本一郎(やまもと・いちろう) 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。情報法制研究所上席研究員。