日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が20日、週刊エコノミストの単独インタビューに応じた。業績が急激に悪化している日産の経営状況について「全く驚かない。(ゴーン氏が社長に就任した)1999年より前に戻っただけ」と述べた。日産とホンダが進める経営統合に向けた協議について「(日産の)経営陣はパニック状態」「対等なパートナーシップとはならないと断言できる。日産は二流の会社になる」と語った。(聞き手=稲留正英/荒木涼子・編集部 エコノミスト・オンラインの関連記事にゴーン氏との一問一答を掲載)
◇日産の現経営陣にはビジョンもなければ、知識もない
ゴーン元会長は日産の現経営陣について「ビジョンもなければ業務効率に向けた知識もない」と批判。日産は、ゴーン氏が同社の社長CEOを退任した2017年当時の時価総額で4兆円程度あったが、直近は一時、1.2兆円台まで減少した。株価低迷について「企業価値の75%は失われたと捉えている」と語った。
日産の業績不振の原因として、ハイブリッド車(HV)の出遅れを指摘されることが多い。だが、ゴーン元会長は「HV技術ではトヨタ(自動車)やホンダが先を行く。HV技術が足りないのではなく、(電気自動車<EV>技術という)自分たちの強みを活かささず、古い経営体質の企業に戻ったからだ」と批判した。
日産は、10年に世界初の量産型EV「リーフ」を発売するなどEVで世界的に先行していた。だが、現在は低価格化を進める中国メーカーや自動運転技術にも力を入れる米テスラに水をあけられている。「(社長だった当時の)EV注力は正しい選択だった。今日の業界の勝者はEVに投資した人々だ」と振り返った。
◇日産はホンダやホンハイの意思に従うことになる
そのような中、日産については、ホンダとの統合協議に加え、台湾最大の企業、鴻海(ホンハイ)精密工業が日産の経営権取得に向けて出資しようとする動きがあったとされる。ゴーン元会長は「ホンダであれホンハイであれ、日産の経営権を握ることになった者は、日産のためにするわけではない。株主への説明責任もあり、慈善事業ではない。(日産の経営力からすれば)誰かの意思に従うことになるだろう」と述べた。