公益通報者、つまり組織の不正を内部告発した人たちを守るための法律が、いよいよ大きく変わろうとしています。政府は、公益通報者保護法を改正し、告発者への不利益な取り扱いに対して企業側に刑事罰を科す方針を固めました。2025年1月の通常国会への改正案提出を目指しています。今回は、この改正のポイントと背景にある社会問題について分かりやすく解説します。
なぜ法改正が必要なのか? 内部告発の現状と課題
近年、企業の不正行為を内部告発するケースが増えていますが、告発者に対する報復や不利益な取り扱いも後を絶ちません。兵庫県で内部告発を行った元幹部が懲戒処分を受けた事案や、中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求問題など、公益通報制度の限界が露呈しました。2023年の消費者庁のアンケート調査では、内部通報者の17.2%が「通報を後悔している」と回答。その理由として「不利益な取り扱いを受けた」「通報を同僚に知られた」ことなどが挙げられています。こうした現状を受け、政府は公益通報制度の実効性を高めるため、法改正に踏み切ることになりました。
首相官邸
罰則の対象となる行為とは?
今回の改正で注目すべき点は、告発者への不利益な取り扱いに対し、企業だけでなく個人にも刑事罰が科される可能性があることです。具体的には、解雇や懲戒処分などが対象となります。配置転換や嫌がらせなど、通報との因果関係を客観的に判断することが難しい行為は、今回は対象外となる見 outlookです。
さらに、300人以上の従業員を抱える企業などに義務付けられている内部通報窓口の設置や担当者の配置についても、違反した場合には刑事罰が導入されます。また、「通報者捜し」や、公益通報を行わないことを約束させる「通報妨害行為」も新たに禁止される予定です。
専門家の声
公益通報制度に詳しい法学者の山田教授(仮名)は、今回の改正について「内部告発をためらうことなく行える環境を作る上で、非常に重要な一歩だ」と評価しています。「企業のコンプライアンス意識を高め、健全な社会を実現するためにも、公益通報者保護は不可欠です。今回の改正が、そのための大きな転換点となることを期待しています」と述べています。
今後の展望
政府は、消費者庁の「公益通報者保護制度検討会」の報告書を踏まえ、2025年2月に改正案を閣議決定し、通常国会に提出する予定です。改正案が成立すれば、公益通報制度の強化につながり、企業の不正行為の抑止効果も期待されます。より透明性の高い社会の実現に向けて、今後の動向に注目が集まっています。
さらなる改善に向けて
今回の改正は大きな前進ですが、課題も残されています。例えば、配置転換や嫌がらせなど、間接的な不利益な取り扱いへの対策は、今後の検討課題となるでしょう。また、通報窓口の運用実態を定期的に点検し、実効性を確保していくことも重要です。
まとめ:公益通報しやすい社会を目指して
公益通報者保護法の改正は、健全な社会を築くための重要な取り組みです。不正を恐れて声を上げられない人が安心して真実を伝えられるよう、制度のさらなる改善が期待されています。