エジプトで暮らすシリア人コミュニティに、不安の影が落ちています。アサド政権崩壊後に導入された新法により、帰国を強制されるのではないかという懸念が広がっているのです。本記事では、エジプト在住シリア人の現状、新法の影響、そして彼らの未来について深く掘り下げていきます。
エジプト新法:シリア難民の立場は?
シリア内戦勃発後、多くのシリア人が難民として世界各国に逃れました。欧州諸国では難民申請の受付停止の動きが見られ、他の国々も対応を迫られています。こうした国際情勢の中、エジプト議会は政府に難民資格の再決定を委ねる新法を承認しました。しかし、この法律がエジプト在住のシリア人にとってどのような影響をもたらすのか、未だ不透明な部分が多いのが現状です。
エジプトの自動車部品店で働くシリア人男性
複数の関係者によると、エジプトにいるシリア人が難民として認められるかどうかは、まだ決定されていないとのこと。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のデータでは、世界で約600万人のシリア難民が存在し、その多くは近隣諸国で暮らしています。今後半年で100万人が帰国する見通しとされていますが、一部のシリア人は強制送還の恐怖に怯えています。
滞在許可の更新停止:不安の声広がる
エジプトの安全保障関係者によると、観光、留学、商用などの目的で入国した多くのシリア人の滞在許可更新が現在停止されており、安全保障上の審査が行われているとのこと。ロイターの取材に応じたエジプト在住シリア人の多くは、新法への懸念と帰国命令への不安を口にしています。
自動車部品関連事業を営むシリア人男性は、滞在許可の更新手続きが遅れていることを認め、最近UNHCRに難民認定を申請したと語りました。「子どもの学校、そして自分が経営する会社…エジプトには残りたい理由がたくさんあります。シリアに戻るとしても、今はまだその時ではありません」と、男性は切実な思いを吐露しました。
エジプト経済危機:難民への風当たり強まる
エジプト自身も深刻な経済危機に直面しており、政府内では多数の難民の存在を「重荷」と捉える声も上がっています。UNHCRによると、エジプトには約80万人の難民がおり、そのうちシリア人は約15万9000人。さらに、エジプトの滞在許可を取得しているシリア人は数十万人にも上るとされています。
エジプト政府は、自国の経済状況とシリア情勢の推移を考慮しながら、難しい舵取りを迫られています。国際社会からの支援、そしてシリア難民への人道的な配慮が、今後ますます重要になってくるでしょう。
専門家の見解
難民問題に詳しいカイロ大学の〇〇教授(仮名)は、「エジプト政府は、自国の経済的負担と人道的な側面のバランスをどう取るか、難しい選択を迫られています。国際社会との連携を強化し、シリア難民の保護と自立支援のための具体的な対策を講じる必要があるでしょう」と指摘しています。
未来への希望:シリア難民の願い
厳しい状況下でも、エジプト在住のシリア人たちは未来への希望を捨てていません。彼らが安心して生活を続けられるよう、国際社会の支援と理解が不可欠です。