韓国経済は今、15年ぶりに1ドル=1450ウォン台に突入した急激なウォン安の波に晒され、企業は生き残りをかけた厳しい状況に直面しています。この記事では、ウォン安の現状と企業への影響、そして今後の展望について詳しく解説します。
ウォン安の現状と背景
年初には1ドル=1300ウォン台だったウォン相場は、一時的にウォン安傾向が鈍化しましたが、アメリカ大統領選挙の結果を受けて再び下落基調を強めました。韓国の不安定な政局やアメリカの金融政策転換も相まって、12月19日には1451ウォンを突破しました。
ウォンの対ドル為替レートの推移を示すグラフ
貿易依存度の高い韓国経済にとって、為替相場の変動は大きな影響を与えます。輸出企業にとってはウォン安は収益増加につながる一方、近年アメリカに生産拠点を移している企業にとっては、為替変動による影響が複雑化しています。巨額の先行投資を行った企業ほど、ウォン安による債務負担の増加や営業利益の減少といったリスクに直面しています。
企業への影響:中小企業から大企業まで
年初に1300ウォン台で経営計画を立てていた企業は、1450ウォン台への急激なウォン安によって原材料費が10%以上増加する事態に陥っています。さらに、来年には1500ウォン台まで下落するとの予測もあり、大企業でさえも経営の危機感を募らせています。
中小企業への打撃
営業利益率が4~5%の製造業の中小企業にとっては、ウォン安による為替差損の増加は死活問題です。一部の企業では営業利益が最大20%減少する可能性も指摘されています。
タイの両替所に貼られた「韓国ウォンは両替できません」という貼り紙
例えば、ステンレス部品を販売する中小企業H社は、ニッケルの国際価格が下落しているにもかかわらず、急激なウォン安によって利益を確保できていません。経営者は「昨年のニッケル価格高騰時よりも原材料費がかさんでいる。営業利益も30%以上減少した」と嘆いています。他の企業でも営業利益が半減したという声も聞かれ、中小企業の間では連鎖倒産の懸念も高まっています。
大企業への影響
産業研究院によると、ウォン安が10%進むと大企業の営業利益率は0.29ポイント低下すると予測されています。急激なウォン安は予想外だったため、多くの企業が十分な準備ができず、増収効果も相殺されているのが現状です。
企業の対応と今後の展望
予想外のウォン安を受け、大手企業や中堅企業は事業計画の見直しを迫られています。石油化学、鉄鋼、航空などの業界では、リストラの早期実施も検討されているようです。
韓国経済の先行きは不透明感が増しています。政府の対応や今後の為替相場の動向が、企業の命運を左右する重要な要素となるでしょう。 専門家の中には、「韓国政府は為替介入だけでなく、輸出企業への支援策や中小企業の資金繰り支援など、多角的な対策を講じる必要がある」と指摘する声もあります。(経済アナリスト キム・ヨンチョル氏)
ウォン安の長期化は、韓国経済にとって大きな試練となることは間違いありません。企業は生き残りをかけて、この難局を乗り越えるための戦略を練り上げていく必要があります。