東京大学生の榎本春音さん、胸オペを経て掴んだ自分らしさ

東京大学に通う20歳の榎本春音さんは、トランスジェンダー男性として、この秋、乳房切除手術を受けました。自分らしく生きるための大きな一歩を踏み出した榎本さんの胸の内を探ります。

胸への違和感、そして手術を決意するまで

幼少期の榎本さん幼少期の榎本さん

幼い頃の榎本さんは、将来男性器が生えてくると信じて疑わず、自身の体に特別な抵抗感は抱いていませんでした。しかし、小学校高学年で二次性徴が始まり胸が膨らみ始めると、心に変化が現れます。周囲から「女性」として扱われることへの違和感、そして自身の体の変化への戸惑い。それらは全て「自分がおかしい」せいだと、榎本さんは自分を責めていました。

中学時代は、周囲に溶け込むために女性として振る舞うことに必死でした。本当の自分を押し殺し、苦しい日々を過ごしながらも、他に方法が見つかりませんでした。

中学時代の榎本さん中学時代の榎本さん

転機が訪れたのは中学3年生の時。自転車に乗っている際に胸が風に揺れるのを感じ、強い違和感に襲われた榎本さんは、胸を平らにしたいという一心でインターネットで検索を始めます。そこで「ナベシャツ」の存在、そして「トランスジェンダー」という言葉を知り、初めて自分自身と向き合うきっかけを掴んだのです。

手術への不安と希望

手術後、病室での榎本さん手術後、病室での榎本さん

手術の2日前、榎本さんは落ち着き払って手術への心境を語ってくれました。初の手術、そして全身麻酔への不安を抱えながらも、胸が平らになった自分の姿を想像し、晴れやかな気持ちも感じているとのこと。ピアスを開けることさえ怖かった榎本さんが手術を決意したのは、胸が自分らしく生きるための大きな壁だったからです。「苦しんで手術を受けたわけではない、自分で掴み取ったこと」と語る榎本さんの言葉には、強い決意が込められていました。性別適合手術に関する専門家である山田先生(仮名)は、「性同一性障害を抱える人にとって、性別適合手術は精神的な安定をもたらす重要な選択肢の一つです」と述べています。

自分らしさを受け入れる

榎本さんの物語は、性自認に悩む多くの人々に勇気を与えるでしょう。自分らしく生きるための道のりは決して平坦ではありませんが、榎本さんのように、自分自身と向き合い、一歩ずつ進んでいくことが大切です。