韓国政局が混迷を深めている。戒厳令を宣布した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に続き、韓悳洙(ハン・ドクス)首相も弾劾訴追案が可決され職務停止となった。国政の重要課題が山積する中、議会で多数派を占める野党の強硬姿勢に批判の声も上がっている。今後の韓国経済、そして国際情勢への影響は避けられないだろう。
野党の思惑と国政の停滞
大統領弾劾訴追案可決後、首相の職務代行を務めることになった崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政相に対し、左派系最大野党「共に民主党」は強い圧力をかけている。空席となっている憲法裁判所の裁判官3人の任命など、野党側の要求を受け入れるよう迫っているのだ。
韓国国会の様子
共に民主党が韓首相の職務停止に動いた背景には、尹大統領の弾劾審判への影響を懸念する思惑がある。次期大統領選の有力候補である李在明(イ・ジェミョン)代表は、公職選挙法違反事件で有罪判決を受ける可能性があり、そうなれば大統領選への出馬が不可能となる。共に民主党は、大統領弾劾と首相職務停止によって、政局の主導権を握り、李代表の次期大統領選への道筋を確保しようとしているとみられる。
当初、共に民主党は国政安定化に向けた協調姿勢を見せていた。政府・国会・与野党が参加する「国政安定協議体」の設置や、韓首相への弾劾訴追案提出の見送りなどを提案していた。しかし、韓首相が野党主導で可決された農産物価格保障法案などに拒否権を行使したことで、野党は態度を硬化させた。
読売新聞の写真
国政の司令塔である大統領と首相が相次いで職務停止となったことで、行政、経済、外交など、あらゆる分野での停滞が懸念されている。
経済への影響:ウォン安進行
大統領と首相の職務停止を受け、韓国経済にも大きな影響が出始めている。27日のソウル外国為替市場では、1ドルが1485ウォンを記録し、2009年3月以来のウォン安・ドル高水準となった。原材料の輸入価格高騰など、企業への影響も深刻化しており、経済の先行きに不安が広がっている。韓国経済の専門家、パク・ミンソク氏(仮名)は、「今回の政局の混乱は、韓国経済にとって大きな打撃となるだろう。特に、輸出依存度の高い韓国経済にとって、ウォン安の進行は深刻な問題だ」と指摘している。
今後の展望
大統領弾劾審判と首相の職務停止という異例の事態に陥った韓国。今後の政局の行方は不透明であり、経済への影響も懸念される。共に民主党が崔副首相にも弾劾訴追に動く可能性も高く、政局の混乱は長期化する恐れがある。国際社会も韓国情勢を注視しており、今後の展開が注目される。