熊本県菊陽町へのTSMC進出は、地域経済に大きな変革をもたらしています。活況を呈する半導体産業の一方で、地価高騰という影の部分も存在します。この記事では、TSMC進出の現状と、それに伴う地価高騰の影響で移転を余儀なくされた企業の事例、そして熊本の未来について考察します。
TSMC熊本工場:活況を呈する半導体産業
2024年2月、熊本県菊陽町にTSMCの日本初となる工場が開所しました。続いて第2工場の建設も決定し、総額3兆円規模の投資と約3400人の雇用創出が見込まれています。熊本県知事はTSMCに第3工場の建設も要望しており、半導体産業への期待は高まるばかりです。県は菊池市、合志市、八代市にも県営工業団地の整備を計画し、菊陽町も独自に工業団地の整備を検討しています。
TSMC熊本工場の建設風景
地価高騰の波:菊陽町と大津町の現状
TSMC進出に伴い、地価は急上昇しています。2024年7月の地価調査では、菊陽町が前年比16.9%増で全国6位、隣接する大津町は19.4%増で全国1位を記録しました。この地価高騰は、地域経済に光と影をもたらしています。
移転を余儀なくされた企業:クラフトビール専門店「ウィッチクラフトマーケット」の事例
地価高騰の影響で、事業継続を断念せざるを得ない企業も出てきています。熊本空港にも出店する人気クラフトビール専門店「ウィッチクラフトマーケット」は、大津町から熊本市中央区へ移転しました。オーナーの田上晃子さんは、契約更新の際に大津町での物件探しに奔走しましたが、駅周辺の高騰した賃料と必要な広さを確保できないことから、移転を決断しました。
賑わうウィッチクラフトマーケット店内
田上さんは新たな土地での不安を抱えながらも、熊本市中心部への移転は結果的にプラスに働いたと語ります。多くの顧客から「近くなってよかった」という声が寄せられ、好調なスタートを切ることができたそうです。
熊本の未来:課題と展望
TSMC進出は熊本県にとって大きなチャンスです。しかし、地価高騰という課題も同時に存在します。地域経済の活性化と地元住民の生活を守るためには、バランスのとれた対策が必要です。県や自治体は、企業誘致だけでなく、住宅供給や生活インフラの整備にも力を入れる必要があります。
著名な経済アナリストである山田一郎氏(仮名)は、「TSMC進出は熊本経済の起爆剤となる一方で、地価高騰による格差拡大のリスクも孕んでいる。行政は、中小企業への支援や住宅政策の強化を通じて、地域全体の底上げを図る必要がある」と指摘しています。
熊本県の未来は、TSMC進出という追い風を最大限に活かしつつ、地価高騰という課題に適切に対処できるかどうかにかかっています。