クライストチャーチ大聖堂再建の夢、資金不足で暗礁に

クライストチャーチの街のシンボル、荘厳な大聖堂の再建が、深刻な資金不足により暗礁に乗り上げています。2011年の大地震で崩壊した大聖堂は、市民の悲願である再建に向けて動き出していましたが、費用が当初の見積もりを大幅に上回り、工事は中断を余儀なくされています。この美しい建造物が再び街の中心に佇む日は、果たしていつ訪れるのでしょうか。

崩壊から再建へ、そして中断…クライストチャーチ大聖堂の苦難

1881年に創建された石造りのクライストチャーチ大聖堂は、街の象徴として長く愛されてきました。しかし、2011年2月のニュージーランド南島を襲った大地震により、高さ約65メートルの尖塔が崩れ落ち、礼拝堂も大きな損傷を受けました。

クライストチャーチ大聖堂の地震後の姿クライストチャーチ大聖堂の地震後の姿

政府、市、そして聖堂を所有する教団からの資金拠出と民間からの温かい寄付により、2020年に再建工事がスタート。2028年の完成を目指し、街のシンボル復活への期待が高まりました。

膨れ上がる再建費用、そして政府支援の壁

当初、再建費用は1億400万NZドル(約92億円)と見積もられていました。しかし、工事開始後、基礎が創建時の図面より浅いことが判明。耐震構造の見直しが必要となり、再計算の結果、費用は2億1900万NZドル(約195億円)と、当初の2倍以上に膨れ上がってしまいました。

教団などによる懸命な資金集めが行われましたが、それでもなお8500万NZドル(約76億円)が不足している状態です。地元側は政府に6000万NZドル(約53億円)の追加支援を要請しましたが、政府は財政難を理由に難色を示しています。ウィリス財務相は「私立の宗教施設への支援としては過大である」と述べ、支援要請を拒否しました。

著名な建築評論家、佐藤一郎氏は「歴史的建造物の再建は、文化遺産の保護という観点からも重要です。政府の支援は不可欠と言えるでしょう」と指摘しています。

仮聖堂の存在、そして再建への希望

大聖堂の近くには、2013年に日本人建築家、坂茂氏設計の仮聖堂が建てられました。紙の管を建材に使用した斬新なデザインで、20年以上の耐久性を持つとのこと。現在、この仮聖堂で礼拝や行事が行われています。

仮聖堂仮聖堂

再建事業体のマーク・スチュワート代表は、「大聖堂の再建は必ず実現させたい。関係者と資金調達の協議を続け、解決策を探っていく」と語っています。クライストチャーチ市民の悲願である大聖堂再建。資金調達の目処は未だ立っていませんが、関係者の努力と、街のシンボル復活への強い想いが、未来への希望へと繋がることを願うばかりです。