大阪・ミナミの繁華街、グリコの看板下、通称「グリ下」。きらびやかなネオンに照らされたこの場所は、家庭に居場所がない、虐待や性暴力などの問題を抱えた若者たちの集まる場所となっています。年末年始には警察による一斉補導も行われましたが、帰る家がない彼らにとって、一時的な措置では根本的な解決にはなりません。そこで、NPO法人「D×P」が立ち上がり、若者たちの新たな「居場所」、ユースセンターを運営しています。この記事では、グリ下に集まる若者たちの現状と、彼らを支えるユースセンターの活動について深く掘り下げていきます。
家庭に居場所がない若者たちの避難所:D×Pユースセンターとは?
大阪・ミナミのグリ下近くにあるNPO法人「D×P」が運営するユースセンター
グリ下から徒歩わずか5分の場所に、D×Pが運営するユースセンターがあります。喧騒の街から一歩足を踏み入れると、そこはまるで友人の家のような温かい空間が広がっています。漫画やギター、ぬいぐるみ、ゲームなど、10代の若者らしいアイテムが揃い、思い思いにくつろげるスペースが用意されています。虐待や性暴力、経済的搾取など、様々な困難を抱えた若者たちが、安心して過ごせる「セーフスペース」です。1日に50~60人もの若者が訪れ、暖を取り、温かい食事を共にし、心を通わせています。センターでは、スタッフが心を込めて作った食事が提供され、延べ5000食以上もの温もりを届けてきました。時には若者たちが一緒に料理を作ることもあり、家庭では味わえない温かい交流が生まれています。
令和の若者らしくTikTok撮影場所も完備!
ユースセンターには、現代の若者文化を反映したTikTok撮影場所も設置されています。様々な事情を抱えた若者が集まる場所だからこそ、プライバシーへの配慮も欠かせません。「TikTok撮影場所」と書かれたついたてを設置することで、撮影中の映り込みを気にせず、安心してコンテンツ作成を楽しめる環境が整えられています。これは、D×Pが若者たちのニーズを的確に捉え、時代に合わせた柔軟なサポートを提供している証と言えるでしょう。
低年齢化するグリ下の深刻な現状と支援の必要性
ユースセンターで話す、D×P理事長の今井紀明さん
2023年6月に開設されたユースセンターは、週2回、午後4時から10時まで開所しています。夜に仕事を持つ20代の若者も利用しやすい時間帯です。主な利用者は13歳から17歳ですが、25歳までの若者も利用できます。近年、グリ下に集まる若者の年齢層はSNSの影響もあり低年齢化が進んでいます。D×P理事長の今井紀明氏によると、小学生の姿も見られるようになり、深刻な状況となっています。SNSを通じて「死にたい」「オーバードース」といったキーワードで繋がる若者たちもいるそうです。今井氏は、若者たちが繋がりを持つこと自体は肯定しつつも、グリ下が性的搾取や犯罪に巻き込まれやすい危険な場所となっていることを危惧しています。
支援の未来へ
大阪・ミナミのグリ下(左)と、NPO法人「D×P」のユースセンター(右)
犯罪の温床となる危険性もあるグリ下。安心して集まり、必要な支援や福祉サービスへと繋げるための、グリ下に代わる安全な場所の必要性を強く感じ、ユースセンターの開設に至ったのです。家庭環境に問題を抱える若者たちにとって、ユースセンターはまさに「希望の光」と言えるでしょう。温かい食事、安心できる空間、そして親身なスタッフとの交流は、彼らにとってかけがえのないものとなっています。今後、より多くの若者たちが安心して過ごせるよう、ユースセンターのような支援の輪がさらに広がっていくことを願います。