トランプ米大統領が韓国による原子力潜水艦(原潜)の建造を承認し、これを米国フィラデルフィアの造船所で実施する方針が示された。これと並行し、日本の小泉防衛大臣も11月6日のテレビ番組で、日本の置かれた「本当に厳しくなっている」安全保障環境を鑑み、「原子力潜水艦なのか。議論をしていかなければいけない」と発言し、日本における原潜導入の可能性を示唆した。韓国が米国で原潜を建造する背景には何があるのか、そして日本に原潜は本当に必要なのだろうか。
韓国が米国で原潜建造に至った背景
韓国が米国で原潜建造の許可を得た経緯について、米国防シンクタンクの海軍戦略アドバイザーである北村淳博士は、両国の経済的・戦略的連携を指摘する。日本の新日鉄がUSスチール買収で話題となる中、韓国は米国造船業界への食い込みを図り、フィラデルフィアの元米海軍造船廠を韓国企業が買収していたという。
現在の米国の造船業界は、世界のシェアが0.1%と低迷し、主に軍艦建造に特化している状況だ。トランプ大統領が「MAGA」の一環として造船業の復活を掲げる中、韓国は米国の造船業を大幅に支援する立場にある。この支援と引き換えに、米国からの反発を避けつつ原潜建造の協力を仰いだ形だ。北村氏は、韓国原潜は「米韓同盟確保のための戦略的産物」であると分析している。
日本に原子力潜水艦は必要なのか?
一方、小泉防衛大臣が言及したように、日本においても原潜導入の議論が本格化している。自民維新連合政権は既に原潜導入を決定したと見られており、その合意文書には、「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有についての政策を推進する」と明記されている。ここで言う「VLS」はミサイルの垂直発射システムを指し、「次世代の動力」は原子力推進を意味する。つまり、日本の政権与党間で原潜保有が合意されている状況だ。
VLS搭載潜水艦と日本の反撃能力
元海将で金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏は、原潜議論がVLS(垂直発射装置)による抑止力との兼ね合いから浮上したと説明する。日本は核弾道ミサイル搭載原潜(SSBN)を持つことはできないが、反撃能力として開発中の射程1000kmを超える12式改対艦ミサイルが発射可能な「水中発射型垂直発射装置の研究試作」について、防衛装備庁が川崎重工と随意契約を締結した。これはVLS搭載型潜水艦の建造が検討されていることを示唆している。
7月に行われた有識者会議では、「その場合通常型ディーゼル潜水艦で大丈夫なのか?」という議論がなされ、次世代動力としての原潜の必要性が提起されたという。
米海軍ヴァージニア級原子力潜水艦ノースカロライナ
日本の原潜建造能力の可能性
韓国が米国との連携を通じて原潜建造を進める一方、日本もまた、変化する国際情勢と防衛戦略の中で、原潜保有の道を模索している。果たして日本は、技術的、政治的に原子力潜水艦を自国で建造する能力を有するのだろうか。この問いは、今後の日本の防衛政策における重要な焦点となるだろう。
参考資料
- トランプ政権が韓国の原潜建造を承認!小泉防衛相が日本版「原潜保有」に言及する理由. 週プレNEWS. https://news.yahoo.co.jp/articles/16b6ab2a467bff64ff47aedb8d635c496b886746





