中国の公務員志望者、過去最多340万人!安定志向の高まりを背景に競争激化

中国では、2024年の公務員試験の志願者数が過去最多の340万人に達しました。これは前年比で40万人以上の増加、2014年と比較すると実に3倍という驚異的な数字です。民間企業の採用縮小や若者の失業率の高止まりを背景に、安定した雇用を求めるZ世代を中心に、公務員人気が急上昇しています。

公務員のメリットと若者の不安

公務員の募集年齢は多くの場合35歳までとなっており、住宅補助や社会保険などの手厚い福利厚生が魅力です。民間企業への就職が困難な状況下、新卒者にとっては大きな安心材料となっています。シンガポール国立大学のアルフレッド・ウー准教授は、「中国政府は体制維持の要となる公務員を減らす意向はない」と分析しています。北京の大学院に通う24歳の学生は、インターンシップ先で同僚が解雇されるのを目の当たりにし、公務員または国有企業しか受験しないと決意しました。「とにかく試験に合格したい。将来のことは今は考えたくない」と、切実な思いを語っています。筆記試験に合格しても面接や健康診断など、幾つもの関門が待ち受けており、最終的な合否が判明するのは4月頃となります。

中国の若者たちが公務員試験会場に向かう様子中国の若者たちが公務員試験会場に向かう様子

地方公務員の厳しい現実:給与不払いも

一方、地方公務員の現状は大きく異なります。複数の省の公務員への取材によると、財政難の影響で給与カットや不払い、人員削減といった厳しい状況に直面しているといいます。深セン市で公務員として働いていた女性は、1万5000元(約2000ドル)だった給与が4分の1に減額され、ボーナスも廃止。さらなる削減の可能性を示唆されたため、7月に退職を決意しました。月4000元(約550ドル)というわずかな収入で住宅ローンを返済しながら家族を養っているケースもあるようです。

肥大化する公務員組織と改革のジレンマ

中国では、肥大化した国有部門の改革が長年の課題となっています。過去にも何度か改革が試みられてきましたが、公務員の数は2010年の690万人から現在は800万人に増加。さらに、公務員よりも雇用保護が薄い学校や病院の職員なども3100万人以上存在します。地方では2020年以降、雇用縮小と人員削減により、数万人の公務員がひっそりと削減されてきました。

社会の安定と制度改革の板挟み

中国の名門大学のガバナンス分野の教授は、地方公務員の給与不払いは「全国的、組織的、普遍的な問題であり、短期間での解決は不可能」と指摘。公務員がチップや賄賂で収入を補填するなどの汚職の増加や、市民への行政罰の増加につながる可能性を危惧しています。「社会の安定が最優先事項となっている今、公務員の雇用は拡大し、制度改革は後回しにされている」と、現状への懸念を示しました。