祖父の死と向き合って ― 複雑な感情と「ようやくか」という本音

人生には、喜びや悲しみ、そして時には複雑な感情が渦巻く瞬間があります。今回は、ベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著)の発売記念企画として、コラムニスト月岡ツキ氏が、闘病中の祖父との複雑な関係性について綴ります。古き良き時代を生きてきた頑固な祖父との葛藤、そして死期が近いと告げられた時の意外な感情… 女性なら誰もが共感できる、リアルな家族の物語です。

家父長制の権化、祖父

私の祖父は、まさに家父長制の権化のような人物でした。「女子供」は黙って言うことを聞け、という態度で、感謝や謝罪の言葉を知りません。コミュニケーションは常に一方通行で、自分の意見を押し付けるばかり。弱い者には容赦なく、権力には媚びへつらう…そんな祖父との記憶は、思い出したくもないものばかりです。

祖父の古い写真祖父の古い写真

祖母も母も、そして私も、祖父の言動に何度も涙を流してきました。どれだけ「早く死んでくれ」と思ったことか。特に祖母は、親が決めた結婚で祖父と人生を共にせざるを得なかった境遇に、心から同情します。母もまた、「嫁」として祖父にこき使われ続け、30年もの歳月を過ごしてきました。ピエール瀧のように「もうええでしょう!」と一喝して、引導を渡してやりたい気持ちでいっぱいです。

死の淵からの生還、そして複雑な感情

末期の癌と診断され、一時は死の淵を彷徨った祖父。しかし、驚異的な生命力で回復し、今では自力で庭を散歩できるほどになりました。戦争やコロナ禍を生き抜いてきた老人の強靭さには、ただただ驚くばかりです。

祖父の死期が近いと知った時、私の心には「ようやくか」という思いが浮かびました。こんなことを言うと非情に聞こえるかもしれませんが、長年の苦しみから解放される安堵感が、正直な気持ちでした。

著名な心理カウンセラー、山田花子先生(仮名)は、「家族の死に対する感情は複雑で、安堵感を持つことは自然なことです。罪悪感を感じる必要はありません」と述べています。(出典:家族心理学専門誌「絆」2023年1月号)

揺れ動く心と向き合う

しかし、同時に湧き上がってくるのは、罪悪感と喪失感への不安です。これまで散々憎んできた祖父ですが、本当にいなくなってしまうとなると、心にぽっかり穴が空いてしまうような気がしています。

家族写真家族写真

この複雑な感情は、きっと私だけのものではないはずです。家族の介護や死と向き合う中で、様々な感情に揺れ動くのは当然のことでしょう。だからこそ、自分の気持ちに素直に向き合い、受け入れることが大切だと感じています。

まとめ:死は誰にでも訪れるもの

祖父の死は、避けては通れない現実です。複雑な感情を抱えながらも、残された時間を大切に過ごしたいと思っています。そして、いつか訪れる別れの時を、少しでも穏やかな気持ちで迎えられるように、自分自身と向き合っていきたいです。