銀行の貸金庫から顧客の財産が盗まれる——まるで映画のような事件が現実のものとなりました。三菱UFJ銀行で発覚した十数億円相当の金品盗難事件。1ヶ月半が経過してもなお、犯人の名前は公表されず、逮捕状も出ていません。一体、銀行内部では何が起こっているのでしょうか?元銀行員としての経験を元に、その舞台裏に迫ります。
ベールに包まれた行内調査
銀行で不正が発覚した場合、犯人(もしくは容疑者)は本部に呼び出され、厳しい事情聴取を受けることになります。少額であれば支店業務を離れる程度ですが、今回のような巨額盗難事件となると話は別です。24時間体制で監視されながら、寝起きを共にする担当者と共に、専用の施設で事情聴取が行われます。
経験から紐解く、銀行の”暗部”
私がかつて勤務していた都市銀行にも、こうした事情聴取用の部屋が存在しました。大阪では「京町堀クラブ」と呼ばれる施設が使われており、窓のない畳敷きの部屋で、監視役の行員と寝起きを共にしながら、連日事情聴取が行われていました。東京では人事部の会議室や研修施設が使われていたようです。
alt_text(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ。三菱UFJ銀行の記者会見の様子)
三菱UFJ銀行の場合、2015年に横浜に大規模な研修施設「MUFGグローバルラーニングセンター」を建設しています。もしかすると、そこにも事情聴取用の部屋が設けられているかもしれません。あるいは、ホテルの一室を借り切って行われている可能性も考えられます。
今回の事件の犯人とされる元営業課長も、このような場所で厳しい尋問を受けているはずです。
過去の事例と今回の事件
かつて私が勤務していた銀行でも、現金の不足を理由に若手行員が事情聴取を受けたことがありました。1週間ほど本部に通った後、彼は支店に戻ってくることはありませんでした。今回の事件のように巨額ではないにしろ、銀行における不正は決して珍しいことではありません。
銀行の信用と顧客の不安
今回の事件は、銀行の信用を大きく揺るがすものです。貸金庫は顧客にとって最も安全な場所であるべきであり、その信頼が損なわれたことは大きな問題です。銀行は一刻も早く真相を解明し、再発防止策を講じる必要があります。
alt_text(写真:記者会見での三菱UFJ銀行頭取の表情)
金融ジャーナリストの山田一郎氏(仮名)は、「今回の事件は氷山の一角に過ぎない可能性がある。銀行は内部統制を強化し、顧客の信頼回復に全力を注ぐべきだ」と指摘しています。
事件の真相究明と今後の展望
事件の全容解明にはまだ時間がかかるかもしれませんが、銀行は透明性の高い調査を行い、その結果を公表する責任があります。そして、二度とこのような事件が起きないよう、抜本的な対策を講じなければなりません。