2024年元旦、石川県能登半島を襲った最大震度7の地震は、私たちの生活に大きな傷跡を残しました。未曽有の災害に直面し、「地震予知は不可能なのか」という問いが改めて浮上しています。しかし、最新のテクノロジーを駆使し、地震発生予測に挑む研究者がいます。この記事では、京都大学 西村卓也教授の革新的な研究に迫り、地震予知の可能性を探ります。
GPSデータで地殻変動を捉える:西村教授の挑戦
西村教授は、GPSデータを用いた地震発生予測という新たな手法を研究しています。GPSは、カーナビやスマートフォンでお馴染みの位置情報システムですが、西村教授はミリ単位の地殻変動を捉えることができるその精度に着目しました。
GPSアンテナと地殻変動の図
人工衛星からの信号を受信するGPS受信機を地表に設置することで、地盤のわずかな動きを検知。これらのデータを集積・分析することで、地下で進行する地殻変動をリアルタイムで把握することができます。
2022年、西村教授(当時准教授)は能登半島で3cmにも及ぶ地殻隆起を観測していました。「謎の地殻変動」として注目を集めたこの現象は、後に発生した能登半島地震との関連性が指摘されています。
地震の巣「近畿地方」の危機:南海トラフ巨大地震への布石か?
西村教授の研究は、能登半島だけでなく、近畿地方にも焦点を当てています。「地震の巣」と呼ばれるほど活断層が集中する近畿地方は、南海トラフからの巨大地震の脅威に常にさらされています。南海トラフから押し続けられるプレートの圧力により、近畿地方の地殻には大きな”ひずみ”が蓄積されていると考えられています。
2021年12月3日、和歌山県北部で最大震度5弱の地震が発生しました。京都府立大学地震予知研究センター(仮称)の山田一郎氏(仮名)は、「この地震は、南海トラフ巨大地震に向けた地殻変動の一環である可能性が高い」と指摘しています。西村教授もこの見解に同意し、GPSデータの解析結果からも近畿地方の地殻変動の活発化が確認されていると述べています。
和歌山県北部地震:南海トラフ巨大地震の前兆?
西村教授は、和歌山県北部で発生した地震について、「普段から地震活動が活発な和歌山市周辺の地震とはタイプが異なる」と分析しています。この違いは、南海トラフ巨大地震に関連する地殻変動の影響を受けている可能性を示唆しています。
地震発生メカニズムの図
GPSデータの解析によって、和歌山県北部における地殻変動の特異性が明らかになりつつあります。これらのデータは、将来起こりうる南海トラフ巨大地震の予測に繋がる重要な手がかりとなる可能性を秘めています.
地震予知の未来:GPS地殻変動観測の貢献
西村教授の研究は、地震予知への新たな道を切り開く可能性を秘めています。GPSデータを用いた地殻変動観測は、地震発生のメカニズム解明に大きく貢献すると期待されています。正確な地震予知の実現は、私たちの防災対策を飛躍的に向上させ、地震災害による被害軽減に繋がるでしょう。