欧州連合(EU)が2035年までに内燃機関を搭載した新車の販売を禁止する方針を打ち出して以降、多くの自動車メーカーが電気自動車(EV)への完全移行を宣言しました。しかし、近年、EV市場の動向や顧客ニーズの変化を受け、一部メーカーは戦略の見直しを迫られています。 この記事では、EV化目標を再考する欧州自動車メーカーの現状と今後の展望について解説します。
メルセデス・ベンツ:市場の声に耳を傾け柔軟な対応
メルセデス・ベンツの電気自動車
メルセデス・ベンツは、いち早く2030年までの完全EV化を宣言したメーカーの一つでした。しかし、CEOのオラ・ケレニウス氏は「顧客にEVを押し付けるべきではない」と述べ、2024年には計画を撤回。内燃機関を搭載したハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売継続を表明しました。EV販売の伸び悩みや顧客のHV・PHVへの根強い需要を背景に、柔軟な戦略転換を図っています。 自動車評論家の山田一郎氏(仮名)は、「メルセデス・ベンツの決断は、市場の現実を直視した賢明な判断と言えるでしょう。顧客ニーズを的確に捉え、多様な選択肢を提供することで、市場競争力を維持できる可能性があります」と分析しています。
ボルボ:EV専業メーカーへの道のりは続くも目標を修正
ボルボもまた、2030年までの完全EV化を掲げていましたが、2024年に計画を修正。2030年までに新車販売の90%以上をEVまたはPHVとする新たな目標を発表しました。EV専業メーカーへの移行は2040年まで延期されましたが、市場動向次第で更なる修正の可能性も示唆されています。
ジャガー:完全EV化への強い意志は健在か
国産メーカーのバッテリーEV
インドのタタ傘下にあるジャガーは、2025年からの完全EVブランド化、2030年までの全車EV化を目標としています。現時点では計画撤回の報道はありませんが、唯一のEVモデル「I-PACE」の販売終了が噂されるなど、今後の動向が注目されます。
アウディとフォルクスワーゲングループ:EV需要減速の影響は?
アウディは2026年以降発売の新車を全てEVとする計画を推進しています。しかし、親会社であるフォルクスワーゲングループが、世界的なEV需要の減速を理由にアウディのEV生産工場の閉鎖を検討しているとの情報もあり、計画への影響が懸念されています。
ステランティスグループ:マルチエナジー戦略の行方
ステランティスグループは、2030年までに欧州での新車販売の100%をEVとする目標を掲げ、EV専用プラットフォームの開発を進めてきました。しかし、近年では様々なパワートレーンに対応できる「マルチエナジー」戦略を打ち出しており、当初の計画からの変更が指摘されています。
まとめ:変化する市場環境への対応が鍵
欧州自動車メーカーのEV化戦略は、市場環境の変化や顧客ニーズの多様化によって大きく影響を受けています。柔軟な対応と持続可能な戦略の構築が、今後の競争を勝ち抜く鍵となるでしょう。 EV市場の動向は今後も変化していくことが予想されます。各メーカーがどのような戦略を展開していくのか、引き続き注目していきましょう。