中国海軍が3隻目となる空母「福建」の配備に向けた準備を加速させています。2024年5月以降、試験航海を精力的に実施し、艦載機の訓練も進められているとみられています。就役時期は早ければ2025年前半との見方もあり、その動向に注目が集まっています。
通常動力空母としては初、電磁カタパルト搭載の「福建」
「福建」は、中国の空母としては初めて電磁カタパルトを搭載した通常動力空母です。既存の「遼寧」「山東」はスキージャンプ式で艦載機を発艦させていましたが、「福建」の電磁カタパルトは艦載機をより効率的に射出できるため、攻撃・防御能力の大幅な向上が期待されています。
試験航海のペースは過去2隻よりも速く、就役間近?
2024年12月初旬には5回目の試験航海を終了。中国のSNSに流出した写真からは、甲板上に航空機のタイヤ跡とみられる黒い筋が確認され、タッチアンドゴー訓練が行われた可能性が指摘されています。さらに同月28日には6回目の試験航海に出たとみられ、電磁カタパルトを使った発着訓練の段階に入ったとの観測も出ています。
alt=中国海軍の空母「福建」が試験航海を行う様子
これまでの空母と比較して試験航海のペースが速いことから、中国国内では海軍創設記念日である4月23日前後に就役する可能性も噂されています。米国防総省も2024年12月の年次報告書で、就役時期を「2025年上半期」と予測しています。
電磁カタパルトの運用には課題も
電磁カタパルトは高度な技術を要するシステムで、電力消費も膨大です。原子力空母ではない「福建」で安定的に運用できるかについては疑問の声も上がっています。世界初の電磁カタパルト搭載空母である米海軍の「ジェラルド・R・フォード」でも、運用開始当初はトラブルが続いたことが知られています。専門家の中には、実際に運用できるようになるまでには数年かかるとの見方もあります。
台湾統一を視野に、海軍力強化を推進
習近平政権は台湾統一を悲願としており、周辺海域における米軍の介入を阻止したいと考えています。「福建」に加えて4隻目の空母も建造中とされ、2024年12月には新型強襲揚陸艦も進水させるなど、中国海軍は着実にその戦力を強化しています。
「福建」就役で中国海軍の実力はどう変わる?
「福建」の就役は、中国海軍の戦力に大きな変化をもたらす可能性があります。電磁カタパルトの搭載により、艦載機の運用効率が向上し、より迅速かつ効果的な攻撃が可能になります。
専門家の見解
軍事アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「『福建』の就役は、中国海軍がより遠方の海域で作戦行動を行う能力を高めることを意味する」と指摘します。「電磁カタパルトは、より重い艦載機や早期警戒機の発艦を可能にし、中国の制空権と情報収集能力を向上させるだろう」
alt=中国空母「福建」の艦内
今後の「福建」の動向、そして中国海軍の戦略に、引き続き注目していく必要があります。