中国資本による重要施設周辺の土地買収増加、安全保障上の懸念高まる

日本における安全保障上の重要施設周辺で、外国人や外国法人による土地買収が相次いでいることが政府調査で明らかになり、波紋を広げています。防衛省、米軍施設、空港、原子力発電所など、国の安全に直結する施設周辺における土地取得の実態把握を進める中、中国資本による買収が全体の半数以上を占めていることが判明し、懸念が高まっています。特に「台湾有事」を想定した東アジア情勢の緊迫化を受け、専門家からは強制力のある規制の必要性が訴えられています。

政府調査で明らかになった中国資本の土地買収の実態

2022年に全面施行された土地利用規制法に基づき、政府は初めて全国調査を実施しました。自衛隊基地や海上保安庁施設、原子力発電所など安全保障上重要な施設の周辺1キロを「注視区域」、さらに重要な機能を持つ施設周辺を「特別注視区域」に指定し、調査対象としました。

防衛省周辺の地図防衛省周辺の地図

その結果、20都道府県において、外国人または外国法人による土地174筆、建物197棟、計371件の取得が確認されました。最も多かったのは東京都の171件で、その中でも防衛省市ケ谷庁舎周辺が104件と突出しています。陸上自衛隊の補給統制本部周辺も39件、練馬駐屯地周辺も20件と、自衛隊関連施設周辺への集中が顕著です。

国・地域別に見ると、中国が全体の54.7%にあたる203件(土地87筆、建物116棟)と最多でした。取得面積は計1万6275平方メートルに及びます。韓国が49件、台湾が46件と続き、ベトナム、フィリピン、米国、シンガポールがそれに続きます。

専門家から規制強化を求める声

国際情勢専門家の田中一郎氏(仮名)は、「中国資本による重要施設周辺の土地買収は、安全保障上の重大なリスクとなりうる。情報収集や妨害活動の拠点として利用される可能性も否定できない」と警鐘を鳴らしています。 さらに、「土地利用規制法の運用を強化し、必要に応じて強制力のある措置を講じるべきだ」と提言しています。

具体的な規制強化策の必要性

現状の土地利用規制法では、施設機能を妨げる「阻害行為」が認められた場合に中止勧告や命令を出すことができますが、命令に従わなかった場合の罰則は限定的です。 より実効性のある規制とするためには、罰則強化や取得制限などの措置を検討する必要があるでしょう。 例えば、重要施設周辺の土地取得に際しては、政府の事前審査を義務付け、安全保障上のリスクを精査する仕組みを導入するといった対策が考えられます。

今後の動向に注視が必要

今回の調査結果は、日本の安全保障環境の脆弱性を浮き彫りにしました。中国の海洋進出や軍事力強化が進む中、重要施設周辺の土地買収問題への対策は喫緊の課題です。政府は、土地利用規制法の運用状況を継続的に監視し、必要に応じて法改正も含めた対策を講じる必要があります。 今後の動向に注視していく必要があるでしょう。