韓国の外貨準備高:砂上の楼閣か?真の危機は政治にあり

韓国経済は、常に通貨危機の影に怯えてきた。1997年のアジア通貨危機、2008年のグローバル金融危機。これらの苦い経験は、「通貨危機トラウマ」として国民の心に深く刻まれている。外貨準備高は、荒波から経済を守る防波堤と見なされ、その額は世界9位にまで達した。しかし、真の危機は外からではなく、内側から、政治の混迷から生まれている。

外貨準備高という名の防波堤:本当に安全か?

韓国は外貨準備高を着実に積み上げてきた。2021年10月には4692億ドルというピークを記録し、現在も4000億ドル台を維持している。しかし、この数字だけで安心できるだろうか?適正な外貨準備高の水準については、様々な見解がある。3ヶ月分の輸入額、経常収入額と流動外債の合計、BIS基準など、いずれも高額な数字が示唆される。IMF基準においては、2022年の韓国は適正水準を下回っていたが、2023年7月からは成熟市場として定性評価の対象となった。韓国銀行の李昌鏞総裁も、定量評価だけで外貨準備高の不足を論じるべきではないと指摘している。

韓国銀行韓国銀行

確かに、外貨準備高は危機における重要な「実弾」となる。しかし、際限なく積み上げることは、国家財政への負担となる。外貨準備高を増やすためには、国債を発行し、利息を支払わなければならない。その一方で、運用益は限られている。高利で借り入れ、低利で運用する。これは国家的な損失と言えるだろう。

国内政治の荒波:経済を脅かす真の脅威

外貨準備高という防波堤を脅かす真の危機は、外からの波ではなく、国内政治の荒波だ。非常戒厳令の発令、大統領弾劾訴追といった政治の混乱は、ウォン安ドル高を招き、外貨準備高を減少させた。まるで砂のお城のように、せっかく築き上げた防波堤が崩れ去っていく。

ウォン安ドル高ウォン安ドル高

与党と野党の政治的駆け引き、政争の激化は、経済を人質に取り、危機を増幅させている。「経世済民」、つまり民を救うことが政治の真髄であるはずなのに、現状は真逆と言えるだろう。李昌鏞総裁は、経済を政治プロセスから切り離すことの重要性を訴えている。憲法裁判官の任命をめぐる与野党の攻防も、経済への悪影響を懸念させる。

政争を超えて、真の危機管理を

国家の危機管理において、外貨準備高は重要な役割を果たす。しかし、真の危機は外貨準備高の不足ではなく、政治の混迷にある。政争に明け暮れる政治は、経済を疲弊させ、国民生活を脅かす。真に国民を守るためには、政治が経済を人質にするのではなく、経済の安定を最優先事項として取り組む必要がある。政治の安定こそが、外貨準備高という防波堤を真に強固なものにする鍵となるだろう。