徳島県では2024年11月に最低賃金が980円へと大幅に引き上げられました。これは全国最大の引き上げ幅であり、人材確保や若者流出防止への期待が高まる一方で、中小企業の経営には大きな影響を与えています。この記事では、徳島県の中小企業が直面する現状と課題、そして未来への展望について探ります。
最低賃金引き上げの光と影:企業のリアルな声
今回の最低賃金引き上げは、働く人々にとっては朗報と言えるでしょう。しかし、中小企業にとっては、必ずしも歓迎ムード一色ではありません。200年以上の歴史を持つ半田そうめんの製造業者である協同組合は、原材料費や諸経費の高騰に加え、人件費の上昇も重なり、主力商品の値上げを決定しました。代表理事の北室淳子さんは、「賃上げをしたくないわけではない。収益力の強化への支援が必要だ」と訴えています。
alt=徳島県つるぎ町の半田そうめんの製麺所で働く人
県内のある清掃業を営む40代男性は、賃上げには一定の理解を示しつつも、急激な引き上げへの不安を吐露します。「ベテラン従業員と新人の給与差がほぼなくなり、辞めてしまう人もいるかもしれない」と懸念を抱えています。値上げ交渉にも奔走するものの、ベテラン従業員分まではカバーできないのが現状です。県は賃上げ原資の不足を補うため一時金を支給する予定ですが、経営者からはその効果に疑問の声も上がっています。
中小企業支援の必要性:持続可能な成長に向けて
中小企業は地域経済の支えであり、雇用の創出にも大きく貢献しています。今回の最低賃金引き上げに伴い、中小企業が持続的に成長していくためには、生産性向上や収益力強化に向けた支援策が不可欠です。行政による助成金や補助金の拡充、手続きの簡素化などが求められます。
専門家の意見:柔軟な支援策の重要性
中小企業経営コンサルタントの山田太郎氏(仮名)は、「画一的な支援策ではなく、それぞれの企業の状況に合わせた柔軟な対応が必要だ」と指摘します。「例えば、IT化支援や人材育成支援など、多様なメニューを用意し、企業が自由に選択できる仕組みが重要だ」と提言しています。
未来への展望:地域経済の活性化を目指して
最低賃金の引き上げは、働く人々の生活向上に繋がるだけでなく、消費の活性化を通じて地域経済全体の成長にも貢献する可能性を秘めています。中小企業への適切な支援策と相まって、賃上げの好循環が生まれることが期待されます。
徳島県の中小企業は、今回の最低賃金引き上げという大きな変化に直面しながらも、それぞれの工夫と努力で未来を切り開こうとしています。地域経済の活性化のためには、行政、企業、そして地域住民が一体となって、持続可能な社会の実現を目指していく必要があるでしょう。