西日本各地で梅雨明けが発表され、本格的な夏が近づく中、全国の学校では水泳の授業が相次いで廃止されています。「学校 水泳授業 廃止」の背景にある複数の理由と、生徒や保護者の様々な声をお伝えします。
学校水泳授業の風景 プールサイドに集まる子供たち
廃止の理由:老朽化、気候変動、教員負担
具体的な動きとして、静岡県沼津市では今年度から市立中学校17校すべてで水泳授業が廃止されました。廃止理由として、まずプールの老朽化があります。
静岡県沼津市の風景 学校水泳授業廃止の自治体
沼津市第五中学校の体育教師、渡邉雄司さんは、使用されていないプールの汚れや「ひび割れなど、子どもたちが裸足で歩く上でリスクがある」現状を示し、改築に約2億円かかる費用が課題だと述べます。
学校プールの老朽化を示すひび割れ
次に、近年の気候変動による猛暑です。水温が30℃近くになり「お風呂のようになる」状況では、安全な授業実施が困難になります。猛暑による中止だけでなく、水中での熱中症リスクも高まっています。
水温計が示す30℃近い高水温 熱中症対策
さらに、教師の精神的な負担も大きな理由です。特に、多数の生徒を同時に指導し、安全を確保することへのプレッシャーは大きいと指摘されています。「30人規模だと目が行き届かない子が出てしまい、事故が怖い」と渡邉教師は語り、安全管理へのプレッシャーを訴えます。こうした教員負担の増大も廃止を後押ししています。
中学校水泳授業廃止の貼り紙
生徒と保護者の声:賛成、反対、それぞれの思い
水泳授業の廃止に対し、生徒たちの意見は分かれています。沼津市第五中学校の生徒からは、「夏の暑い日に冷たい水に入るのが気持ちよかった」「皆で競争したり、水中鬼ごっこしたりするのが楽しかった」と、夏の風物詩としての授業がなくなることを寂しがる声が聞かれました。一方、「プール自体が嫌」「水泳が苦手なので、授業廃止されて良かった」と安堵する生徒もいます。
保護者からも様々な声が聞かれます。中学2年生の保護者からは、スイミングスクールに通わせていないため、学校の授業が唯一の泳ぐ機会だったとし、廃止を残念がる意見が出ました。小学生の保護者からは、「水の事故も毎年報道で知る」ことに触れ、「泳ぐ力や水の怖さを知るためにも、プールの授業は必要」「先生に正しい泳ぎ方を教えてもらい、義務教育でやってほしい」と、安全教育の観点から授業継続を強く求める声が聞かれました。
全国で進む学校水泳授業廃止は、施設の老朽化、気候変動、教員負担増など複数の要因の結果です。生徒や保護者の間でも賛否があり、特に安全教育機会が失われる懸念も示されています。この問題は、学校現場が直面する多様な課題の一端を示しており、今後の教育のあり方について議論を呼んでいます。
参考:Yahoo!ニュース