近年の日本では、人手不足や少子化の影響で、大学生にとって就職活動はまさに売り手市場。その一方で、地方公務員の受験者数は減少の一途を辿り、自治体は採用難に頭を抱えています。この記事では、地方公務員離れの現状と、自治体が取り組む様々な対策について詳しく解説します。
地方公務員の魅力とは? 若手職員と学生の生の声
愛知県豊橋市では、公務員志望の大学生と若手職員との座談会を開催。学生からは「地域に貢献できる」「ワークライフバランスが良い」といった声が聞かれ、公務員の魅力が再認識されました。
豊橋市役所での座談会の様子
豊橋市職員からは「休みが取りやすい」「基本的に定時で帰れる」といった働きやすさが強調されました。実際、ワークライフバランスの充実を求める若者世代にとって、公務員の安定した労働環境は大きな魅力となっています。
なぜ地方公務員は選ばれないのか? 受験者数減少の背景
地方公務員の受験者数は、この10年間で約3割減少。その背景には、採用時期の問題や試験対策の負担などが挙げられます。
採用時期の早期化と民間企業との競争激化
民間企業の採用活動が早期化する中、公務員試験は4月から7月に集中。多くの学生が既に民間企業から内定を得ているため、公務員試験の受験を見送るケースが増えています。特に技術系の学生は、待遇面で優位な民間企業に流れる傾向が強いようです。
試験対策の負担と敬遠
公務員試験特有の対策の負担も、学生が敬遠する理由の一つ。「勉強が面倒」「給料の面で民間企業の方が良い」という学生の声からも、現状が伺えます。
地方公務員獲得に向けた自治体の取り組み
受験者数減少という課題に対し、自治体は様々な対策を講じています。
SPI導入による受験ハードルの緩和
名古屋市では、2025年度から民間企業で広く利用されている適性検査「SPI」を導入。従来の筆記試験に加え、SPIでの選考枠を設けることで、より多くの学生に受験機会を提供し、優秀な人材の確保を目指します。人事委員会事務局担当者は、「行政に興味を持つ多様な人材に活躍の場を提供したい」と語っています。
秋採用による辞退者対策
豊橋市では、辞退者増加への対策として、2023年度から秋採用を開始。他の自治体との競争激化に対応し、優秀な人材の確保に尽力しています。人事課担当者は、「自治体間の競争が激化している」と危機感を募らせています。
地方自治体の未来を担う人材確保に向けて
地方公務員は、地域社会を支える重要な役割を担っています。人材不足の解消、そして地方自治体の未来のためにも、自治体と学生双方にとってより良いマッチングが実現されることが期待されます。
専門家の声
地方自治体研究所の山田一郎氏(仮名)は、「地方公務員の採用難は、地方自治体の機能低下に直結する深刻な問題です。自治体は、魅力的な職場環境づくりや採用方法の見直しなど、更なる工夫が必要でしょう」と指摘しています。