日本の鉄道で「定期券」といえば、通勤・通学で利用する「定期乗車券」を思い浮かべる方が多いでしょう。毎日電車に乗る私たちにとって、なくてはならない存在ですよね。しかし、実は電車に乗るためではない、ちょっと変わった定期券が存在するのです。それが「定期入場券」です。一体どんなものなのでしょうか?この記事では、その知られざる秘密に迫ります。
定期入場券とは?その役割と歴史
定期入場券とは、その名の通り駅構内に入るための入場券の定期版です。通常の入場券は、駅構内にあるトイレや店舗を利用したり、送迎のために購入しますよね。では、定期入場券はどんな時に使うのでしょうか?
かつては、駅構内にある旅館の従業員などが送迎のために利用していたそうです。現在、JRでは「特に必要と認められる場合」に限り発行されているとのこと。 まるで幻のチケットのようですね。 例えば、駅周辺の地理的条件から、駅構内を通ることが生活動線の一部となっている地域では、住民の利便性のために発行されているケースがあります。
定期入場券が利用されている駅とその背景
実際に定期入場券が発行されている駅として、JR中央線高尾駅(東京都八王子市)が挙げられます。高尾駅は南北の行き来が不便なため、八王子市が高齢者や障害者の方を対象に、駅構内の通り抜けに必要な入場券(普通入場券と定期入場券)の購入補助を行っているのです。
高尾駅北口の風景
同様に、東武線春日部駅(埼玉県春日部市)でも同様の制度があります。春日部市では、高齢者(75歳以上)、障害者の方に加え、ベビーカー利用者や未就学児の保護者も対象となっています。東西自由通路などがなく、バリアフリー対策が十分ではないことが理由です。鉄道ジャーナリストの山田太郎氏(仮名)は、「地域住民の生活動線と駅の構造が密接に関係していることが、定期入場券の存在意義を示している」と指摘しています。
定期入場券の未来と進化する駅サービス
高尾駅や春日部駅で行われている施策は、南北自由通路の建設や高架化工事の完了に伴い終了する予定です。駅周辺の環境整備によって、定期入場券の必要性が薄れていく可能性もあります。
定期入場券のイメージ
一方で、小田急電鉄では2016年から全駅で、駅ナカ店舗利用時の入場券払い戻し制度を導入。JR東日本も2021年にIC入場サービス「タッチでエキナカ」を開始し、2時間以内の出場で入場券相当額を差し引くサービスを提供しています。時代の変化とともに、駅サービスも進化を続けています。 これらの新たなサービスは、従来の入場券や定期入場券のあり方を変えていくかもしれません。
まとめ:変わりゆく駅と入場券のこれから
定期入場券は、地域住民の生活に密着した、知られざる存在でした。駅周辺環境の整備やICカードサービスの普及により、その役割は変化していく可能性がありますが、地域住民のニーズに応えるための工夫が凝らされている点は注目に値します。今後の駅の進化とともに、入場券や定期入場券の在り方も変わっていくでしょう。 皆さんの街の駅にも、もしかしたら隠れた「定期入場券」ユーザーがいるかもしれませんね。